経済問題

金融危機と金融リタラシー

「日本の金融リタラシー(金融常識)を向上しなくてはならない」と言われて久しい。今次の金融危機の議論を聞いていても、聞こえてこない当たり前の金融常識を列挙してみたい。①円高は世界における日本人の地位を上昇させている。大半の日本人は円建てで純資…

10月相場をどうするか

夏休み前に、TOPIXをショートしておいたが、グローバルな株式市場の下落が予想以上で、休暇中にまたもや損失が増加し、年初からタダ働きをしてしまったことになる。多少の慰めは、子供が留学していていた時には、230円で買っていたポンドが130円…

相場操縦

世界的な株安が続く中、米国国債の格下げもあり、明日の東京市場は結構な円高・株安で始まることになろう。これで、年初から積上げてきた株式投資の利益がほぼ吹っ飛ぶことになり、外貨投資の評価損が増加することにもなり、大変残念である。 中期的には、米…

東北関東震災と資産運用

被災地の惨状が続いている現状で、資産運用を語ることには多少の罪悪感があるが、明日になれば証券市場や為替市場の取引が行われるわけで、自分の老後を託す資産運用に携わる個人投資家として、また大学で金融や証券投資分析を教え、金融機関のコンサルタン…

東北関東震災と資産運用Ⅱ

本日の株式市場は、海外株式市場の上昇、寄付き直前の外資系証券の大幅買い越しから、日経平均は9500円を回復、9608円の大幅高で終えた。10時の段階で当面のリバウンドは終わったと考え、買い持ち(ロング)の一部を売却し、上場TOPIX投信の空売り…

原子力発電所の安全性

東京電力福島第一原子力発電所は、計6基の原子炉のうち4基で、深刻な事故が相次いで発生し、原子炉が十分に制御できない状態に陥っている。思い出すのは1979年の米国ペンシルベニア州のスリーマイル島(TMI)原子力発電所で発生した原発事故と、80年…

S.パタースン「ザ・クオンツ」

M.ルイス「世紀の空売り」が、これまであまり書かれることのなかったアメリカ金融業界の言われているほどの能力がなく、言われている以上に強欲で利己的な金融関係者の姿を描き出したことを高く評価したが、金融書としてはS.パタースン「ザ・クオンツ」…

マイケル・ルイス「世紀の空売り」

80年代半ば、証券化商品開発担当として投資銀行の聞き取り調査を行った。不思議だったことは、ほとんどの投資銀行の証券化商品開発責任者が元ソロモン・ブラザーズ勤務経験者であり、しかも品格にかける二流アメリカ人といった印象を持たされ、高度な数理…

対中国制裁試案

25日の「元の切り上げや自由化をしないのであれば、日本とアメリカは国債を中国には売らないことにする」という意見が理解出来ないと言われたので、少し詳しく説明します。この意見はD・グロス欧州政策研究センター所長がWSジャーナルに投稿されたもの…

何故に今、円高・株安なのか。

何故に今、円高・株安なのか。 円高による輸出環境悪化と説明される円高・株安の連鎖が止まらない。ドル、ユーロ、円の悪さ比べで、円が買われていると説明されるが、日本人投資家が外貨投資を減らし円に戻している部分がほとんどではないだろうか。経済状況…

「鉄の骨」と「勝者の呪い」

NHK土曜ドラマ「鉄の骨」を見た。ある程度の知識がある土木工事の談合の話なので、観るつもりがなかったが、第1回目を観た時に、談合即悪というステレオタイプに話を進めてないことを好感して、最後まで観てしまった。 公開入札方式は表面的・教科書的に…

野口先生もそう言っておられるのに・・・

前回の「またもや円預貯金者の勝利」の続きです。 敬愛する野口悠紀雄先生が、「野村ジョイ」のインタビューで次のように言われていることを見つけた。Quote − いずれにしても、何らかの形で資産運用をしていくことは必要だといえますか。金融資産は何らかの…

「サザエさんと株価の関係」

「サザエさんと株価の関係―行動ファイナンス入門」(吉野貴品、新潮新書)という本があります。ポイントを言えば、昭和44年から放映されている長寿アニメ「サザエさん」の視聴率で、景気が分かり、株価が分かるとしております。確かに、サザエさんの視聴率が…

「空飛ぶタイヤ」

WOWOWの関係者から好評の連続ドラマであると聞かされて、正月にDVDを観ることにした。原作も同名であるが、命名が悪く、子供向けアニメかと思っていたが、三菱自動車リコール問題を下敷きにした極めて硬派の社会派ドラマと知って驚いた。 志を失いかけている…

ジャック・アタリ「金融危機後の世界」

アメリカの影響を強く受け過ぎた考え方に、フランス人が鋭く異論を聞かせてくれることがある。そんな期待感を持って、本書を読み始めた。 期待は見事に裏切られた。本書は、前回のブログで賞賛したジリアン・テッドの本の対極にある本である。つまり、テッド…

ジリアン・テット「愚者の黄金 大暴走を生んだ金融技術」

旧日債銀粉飾決算に関する経営者責任の判決で、最高裁が高裁へ差し戻したと報ぜられた。ほほ同様に見える旧日長銀の無罪判決と微妙に相異する根拠が議論されているが、両行の仕振の違いや大野木元長銀頭取の誠実さを個人的にも知る立場で言えば、相異する理…

金融技術軽視への警鐘

先日、ある金融専門誌の編集担当と話していて確信させられたが、最近の日本に於ける金融技術軽視の傾向には大変懸念させられる。この編集者に言わせれば、金融技術の論点は出尽くしており、この半可通以下の編集者も含めて理解は既に行きわたっており、金融…

映画産業と銀行産業

「サンシャイン・クリーニング」という映画を観に、木曜日の昼時、日比谷の映画館に行った。開演15分くらい前であったが、平日の映画館としては珍しく、切符を買う行列が出来ていた。日比谷の3スクリーンの東宝だから、行列が出来て当然かもしれないが、…

JDC信託の蹉跌

ジャパン・デジタル・コンテンツ(JDC)信託に業務停止命令が出された。JDCは、映画ファンドなどを信託スキームを利用して、証券化する目的で設立された。通産省のコンテンツ産業育成事業の勉強会の成果から生み出され、トヨタ自動車を筆頭株主に2000…

「グラン・トリノ」と「GOEMON」

私にとって通常であれば、この2本の作品は、映画館には観に行かないで、時間があればDVDで観るカテゴリーに属する作品である。しかし、「グラン・トリノ」は日本の代表的映画プロデューサーが「どうして、クリント・イーストウッドはあんなに映画作りが…

「金融恐慌本」読み比べ(2)

竹森俊平「資本主義は嫌いですか」の面白い点は、バブルは経済成長に必要であると主張するティロールのような経済学者の紹介であった。彼らの主張は、動学的効率性の条件(その経済における投資収益率が成長率を上回る)が満たされない場合には、バブルが経…

 「金融恐慌本」読み比べ(1)

昨年の暮れから、最近目に付きだした「金融恐慌本」の大雑把な読み比べを始めている。このブログで既に書いているが、サブプライム・ローン問題のポイントは何も調べなくても長年の経験で分かる。しかし、私はサブプライム・ローン問題を過小評価してしまっ…

家族企業(ファミリービジネス)

教えることは教えられることでもある。「日経ビジネス」の最新号が、「家族企業の底力」という特集をしている。ゼミ生の卒論に、「ファミリー企業の強さとその中に潜む課題」というのがあり、私の指導は「『ファミリービジネス』という映画があり、悪党の話だ…

農林中央金庫

農林中金が、有価証券含み損1.5兆円の存在を背景に、1兆円の増資を発表した。農中は、農協系統金融機関の余剰資金約60兆円を運用しているが、うち36兆円を海外の投資運用に振り向けており、ファニメーなど米国住宅金融公社債券に3.5兆円、CDO(債務担…

タダのオプション取引

オプションとは選択権のことで、日常的には自動車装備のオプションとか事務所スペース拡張オプションとかいった使い方がされている。 オプション契約の歴史は古代ギリシャないしメソポタミヤ文明まで遡ると言われるが、オプションにより厳密な意味を持たせた…

サブプライム・ローン問題(その4)

サブプライム・ローン業界の現場に詳しい知人から、まとまった話を聞く機会があった。予想以上にひどいことが実践されていたことを知り、最近のなりふり構わぬアメリカ政府の対応状況を重ね合わせて、問題の深刻さを改めて認識させられた。 米国サブプライム…

レーマン放置、AIG救済は妥当である

サブプライム問題がこれほど大きくなるとは予想してなかった。メリル・リンチ証券をほとんど倒産にまで追い込んだ経営者が、数十億円の退職金を受け取るわけだから、アメリカのエリート経営者たちが、私利私欲のために会社をとことん利用しようとするのは当…

「押井守」の実像は何か

映画産業を輸出産業にすることが出来るとすれば、実写映画よりアニメの方が可能性が高い。宮崎アニメは、期待されているよりは低いものの、既に一定の輸出力がある。スピロバーグやキャメロン、そして「マトリックス」に影響を与え、海外での評判も高い押井…

あるべき投資資産配分

資産運用の成果を分ける最大の要因は資産配分、つまり運用資産のどの程度の比率をどの資産に割り当てることにあると考えている。最近1年間で言えば、株式投資の比率が高かった投資家は、それが日本株であっても先進国や新興諸国の株式であっても、グローバ…

風説の流布

オリンピックでの超人たちの感動的な活躍を観ていると、こんな薄汚い話を書くことが惨めに感じられるが、まあ人生いろいろである。 「風説の流布」とは、金融商品の価格を変動させる目的で、虚偽の情報を流し、相場操縦をはかることで、金融商品取引法上の禁…