立川談志

 立川談志が亡くなった。小学生の頃は、ラジオで落語を結構聞いていたが、最近はたまに「笑点」を見るくらいである。私の話し方や雰囲気が談志に似ているという人がたまに居ることから、談志が出演するテレビなどを時々見たこともあり、今日もNHKの談志ドキュメンタリーを見た。「笑点」は談志がプロデュースした番組であることは知らなかったし、天才とまで呼ぶ人がいることに改めて気付かされた。確かに、単なる噺家の粋は出ており、たくさんの雑学と小気良い毒舌には魅力があった。
 名人芸と呼ばれる「芝浜」を聞きたいと思い、もしやと思いつつYOU TUBEを検索したら、簡単に談志の「芝浜」を聞くことができた。無論タダである。オソロシイ時代になったものだ。疲れていたのか、「まくら」が支離滅裂に長く、発音の切れも悪く、とても名人の芸には思えなかった。特に、女房が大家さんに助言されて拾ったカネを隠してしまうくだりは、女房が自分で気付いて隠してしまう話にした方が人情話としては味があるように思われた。談志がいろいろと能書きをいうのであれば、尚更のことである。
 YOU TUBEが凄いと思ったのは、古今亭志ん生の「芝浜」もアップロードされていることであった。時代からして動画ではないが、久しぶりに名人志ん生の「芝浜」を聞いてみると、談志の何倍も味わい深いように思われた。無駄なしゃべくりも無く、発音も明解で味わい深く、談志よりもテンポが速いので近代的ですらあった。特に、志ん生ヴァージョンでは、大家の存在も助言も無く、すべて恋女房の配慮であったことから、話の筋としてもはるかによかった。
 談志自身が言うように、落語家の命は高座での話であるとするなら、少なくも噺家としての談志は志ん生に遠く及ばずに世を去ったように思われる。私に似たところがあると人が言う7才年上の勉強家の噺家であっただけに、妙に寂しいものを感じる。