2010-01-01から1年間の記事一覧

日本の過去は中国の将来像?

また馬齢1年を重ねてしまった。年末にあたり、個人的問題以外でもっとも気になることを述べるとすると、中国のこれからということになる。 中国が過大に評価され過ぎた年であったが、わが国に100年以上遅れて近代化を始めたわけで、世界を指導するにはほ…

S.パタースン「ザ・クオンツ」

M.ルイス「世紀の空売り」が、これまであまり書かれることのなかったアメリカ金融業界の言われているほどの能力がなく、言われている以上に強欲で利己的な金融関係者の姿を描き出したことを高く評価したが、金融書としてはS.パタースン「ザ・クオンツ」…

マイケル・ルイス「世紀の空売り」

80年代半ば、証券化商品開発担当として投資銀行の聞き取り調査を行った。不思議だったことは、ほとんどの投資銀行の証券化商品開発責任者が元ソロモン・ブラザーズ勤務経験者であり、しかも品格にかける二流アメリカ人といった印象を持たされ、高度な数理…

国家・民族と個人

先日、来日したばかりのアメリカ人から「あなたが総理になって、いったい日本の何が変わるの」という唾棄すべき題名の本について聞かれた。私はこの本を読んでもいないし、触ってすらいない。内容など二の次で、このタイミングで出すべき本ではない。「お母…

映画評論家への道(2)

バタバタと時間が過ぎていったが、気になっていた韓国映画DVD2本を観た。①「息もできない」 昨年の東京フィルメックスでグランプリを受賞した作品。 映画の暴力シーンを観ながら、悲しみの涙が滲んできたのは初めての経験である。 人は経験から自己表現…

映画評論家への道

映画評論家になるには、1万本の映画を観ることが必要だと聞くが、私が観た本数は未だ3千本位だろうか。また、2本が加わったが、問題は同じくらいのペースで忘れ始めているように思われることである。①廣木隆一監督「ヴァイブレータ」 寺島しのぶがたくさん…

藪中三十二「国家の命運」

構えてしまうような題名の本ではあるが、仙台との往復で読めてしまう新書である。しかし、何様か解らない連中が売らんがために世の流れに迎合して書いた小遣い稼ぎの本ではなく、事務次官まで務めたプロ外交官の書かれた物であるから、それなりの敬意を持っ…

真山仁「ベイジン」

中国問題を考える材料にツンドクとなっていた真山仁「ベイジン」を読んだ。読み出したら止められない面白さであったが、無理やりエンディングに持ち込まれた欲求不満と残尿感が残っている。日本の技術で中国に巨大な原発を建設し、北京オリンピックの開会式…

尖閣ビデオの流失

流失した尖閣ビデオの内容は、海上保安庁の現状や艦艇の損傷状況から予想した線のものであった。主権在民で、国民の一人としての主権者である私としては見てみたいと思っていたし、公開すれば多分中国漁船の傍若無人の振る舞いが確認され、日本に有利な国際…

東京国際映画祭

10月23日から31日にかけて、六本木ヒルズを中心に第23回東京国際映画祭が開かれた。正確に言えば、映画コンテンツを中心とした見本市のようなTIFFCOM(第7回目),新規企画のビジネス開発市場のTPGが併設され、カンヌ映画祭を代表とする…

読むと損する本

読んで損したと思った本が2冊続いたので、私がAmazonに書いたレビューをご紹介したい。①山下真弥「ハーフはなぜ才能を発揮するのか」(PHP新書) (中身のいい加減さに愕然とした) アメリカ人とイギリス人のハーフである愚妻と、既に30代になった3人…

中国問題再び

新学期のスタートや「東京国際映画祭」などでバタバタして、ブログの更新が出来なかったが、この間に中国問題が想定していたような展開を見せてきた。本日も、「中国側の申し入れで、ハノイの日中首脳会談が見送られた」と報じられ、今しがた「菅首相と温家…

外交敗戦

尖閣問題を考える参考に、ツンドクになっていた手嶋龍一「外交敗戦 130億ドルは砂に消えた」を読んだ。 ここ半年で、「ウルトラ・ダラー」「スギハラ・ダラー」と手嶋さんの本を3冊読んだが、本書がベストである。何方かが「小説は無駄な情景描写が70,8…

対中国制裁試案

25日の「元の切り上げや自由化をしないのであれば、日本とアメリカは国債を中国には売らないことにする」という意見が理解出来ないと言われたので、少し詳しく説明します。この意見はD・グロス欧州政策研究センター所長がWSジャーナルに投稿されたもの…

尖閣諸島問題

昔、ニューヨークで働き始めてすぐに気が付いたことは、ニューヨークではこちらが押し続けていないと押されてしまうということである。香港の怒鳴り合いと押し合いはもっと酷い。国際関係の仕事ではこれがグローバル・スタンダードで、こちらが譲歩したこと…

「悪人」VS「インスタント沼」

上映中の映画「悪人」はモントリオール主演女優賞受賞が話題にならなければ、観に行かなかったかもしれない作品であるが、上映中は完全に映画に集中させられたという意味では良い映画だと思う。このように考えさせるものを持った佳作が、興行的にもヒットし…

自力救済

前回のブログがあまりにアメリカ一辺倒であるとのご意見もありましたので、バランスをとる意味もあり、反対の立場も述べたいと思います。下記は、ジョセフ・ナイ(JFケネディ・スクール名誉教授)が駐日大使の最有力候補と言われていた時期に頻繁に言われ…

「カティンの森」は現代日本の問題

2008年7月5日のブルグに、アンジェイ・ワイダの映画「カティンの森」について書いているが、やっと観ることができた。家から5分のユナイテッド・シネマが単館系の話題作を1周遅れの割り料金で観せるプログラムを始めてくれたので、大変助かっている…

佐藤優「国家の罠」

鈴木宗男有罪確定を機会に、積読になっていた本書を読むことにした。5年も前から評判になっていた本書をなかなか読む気にならなかったのは、直感的に信用できる本ではないと感じていたことと読みにくい文章であったことによる。「講釈師、見て来た様な嘘を…

コップの中の嵐(3)

民主党代表選挙で菅総理が大勝した。国会議員に限った得票比率はほぼ拮抗していたが、選挙を仕切った小澤幹事長が西も東も分からないような新人議員から受けた恩返し得票を差し引いて考えれば、予想以上の大勝と考えられる。軒を貸しただけの民主党が、薄汚…

「スギハラ・ダラー」「ウルトラ・ダラー」

面白い読書で厳しい残暑が忘れられればと、手嶋龍一さんの「スギハラ・ダラー」を読んだ。小説家としてのデビューになる前作「ウルトラ・ダラー」が大変面白かったので、本作も期待して読んだ。しかし、残念ながら、前作が傑作すぎたのか、著者の個性が悪い…

イギリスの夏(5)

「17歳の肖像」というイギリス映画があります。原題は"An Education"で、1961年を舞台とする人気記者の回顧録に基づき2009年に映画化され、多くの映画祭で高く評価されています。原題の方が映画の問題意識に忠実で、日本マーケット向けの邦題は内…

イギリスの夏(4)

イギリスに滞在中に、銀行勤めをしていた頃の部下とその家族に久しぶりに再開した。彼は、ケンブリッジ大学の数学科を卒業し、新入社員として入社してきた。英国訛りの英語が印象的であったが、それ以上に強く印象に残っているのが、入社早々に「新聞紙はじ…

イギリスの夏(3)

「日本語は日本人の魂とかの議論は学校以外で生活したことのない学者先生にまかせて、百万人ぐらいは日本人としても十分教養がありしかも美しい発音で、内容のある文法的に正しい英語を話せ、理解できるような人を養成しなければ日本の将来はない」 これは寺…

イギリスの夏(2)

「サマーウォーズ」という日本のアニメーション映画があります。多少話題になった作品ですが、見逃していたのでテレビ放映を録画しておいて昨晩観ました。情報ネットワークに関するところは理解できませんでしたが、私のイギリスの夏と幾つかの共通点があり…

イギリスの夏

日本に住む孫二人を連れて、久方ぶりに女房のイギリスの田舎に行って来た。ロンドンに住んでいるので未だ会ったことが無かった1歳の孫を含めて、9歳を頭に5人の孫と2週間強いっしょに生活できたので、将に至福の夏休みであった。女房の何代か前の財を成…

何故に今、円高・株安なのか。

何故に今、円高・株安なのか。 円高による輸出環境悪化と説明される円高・株安の連鎖が止まらない。ドル、ユーロ、円の悪さ比べで、円が買われていると説明されるが、日本人投資家が外貨投資を減らし円に戻している部分がほとんどではないだろうか。経済状況…

「鉄の骨」と「勝者の呪い」

NHK土曜ドラマ「鉄の骨」を見た。ある程度の知識がある土木工事の談合の話なので、観るつもりがなかったが、第1回目を観た時に、談合即悪というステレオタイプに話を進めてないことを好感して、最後まで観てしまった。 公開入札方式は表面的・教科書的に…

コップの中の嵐(2)

この間まで政治家との接触が多かった財務省OBを含む6人での晩飯懇談会があり、最近の一連の出来事から菅総理が予想以上に軽い人物であるとの結論で一致した。例えば、笑い顔が人間の一面を巧まず示すものだとすれば、鳩山さんの笑い顔には周囲に気を使い…

「ガラスの巨塔」

本書を小説と思って読む人はいないはずで、将に今井氏の部分的自叙伝である。アングロサクソンの社会では、社会的に活躍した人物の多くが自叙伝をまとめ、当然ではあるが自己正当化を図る。対立した人物の自叙伝を読み比べることで、歴史がより正確に理解出…