対中国制裁試案

25日の「元の切り上げや自由化をしないのであれば、日本とアメリカは国債を中国には売らないことにする」という意見が理解出来ないと言われたので、少し詳しく説明します。この意見はD・グロス欧州政策研究センター所長がWSジャーナルに投稿されたもので、「米国と日本は、両国の住民に公債の購入・保有を認める国に対してのみ、今後は両国の公債の販売を容認する互恵関係を合法的に宣言することができる。中国は、元売り・外貨買いの為替介入を続けているから外貨準備が急増しており、これで最近は相当な円投資を行っているから円高の一要因になっている。日米欧が中国が為替鎖国を続ける限り、日米欧の国債を中国には販売しないと宣言することにより、中国は為替介入を続け、外貨投資を積上げることが大変困難になる。」こういった概要の妙案ではあるが、これにより中国経済が混乱すると世界経済も混乱してしまう可能性が高いという問題がある。

 今回の中国のヒステリックな反応を経験したわけであるから、日本はコップの中でつまらない責任の擦り付けゴッコをするのではなく、中国が未熟な外交カードを振り回した場合の対抗策のリストを準備しその一部を知らしめておくべきである。
 私の身近な例から始めると、日本にはたくさんの中国からの留学生と彼らを含む労働力が組み込まれている。欧米の大学では、外国人留学生定数に国別の上限を設けているのが通例である。現在、ほとんどの大学では中国からの留学生で溢れかえっており、国策としてはインド、タイ、ベトナム等々、下品な恫喝と日本を仮想敵国視しない友好国からの留学生を増加させるべきである。欧米の大学では、非常に優秀な学生を除き、外国人には割高な授業料を課し収益源にしているが、日本における中国人留学生にはアルバイトの機会と授業料免除といった暗黙のメリットを与えているケースが多い。前に勤務していた県立大学では、成績優等生の授業料免除枠の大半が中国人学生に取られていた。私の中国人ゼミ生を含め、このような厳しいことは言いたくいないが、親日的になった中国人卒業生が日本のために発言してくれる余地が無いファシズム体制を中国が続ける限り致し方ないと思う。国立大学や国の研究費で蓄積した日本の知識や経験を、感謝の気持ちを持たない国には提供したくはない。

 今の日本は到るところで中国の方々が働いている。就労ビザの審査や割当を厳しくすると同時に、不法労働の取り締まりを強化すべきである。大学を出ても就職出来ない若者が多い中国の雇用状況を考えると、日本留学や日本での就職というチャンスは重要な雇用機会である。
 もっと視点を広くすれば、中国への日本企業進出は中国に雇用機会を提供しているわけである。80年代前半に、アメリカへの日系企業進出を銀行員としてお手伝いしたが、アメリカ中が雇用機会を提供する日本企業を奪い合っていた。当時アーカンソー州という田舎の州知事であったクリントン夫妻から食事に招待され、クリントン夫人お手作りの食事をご馳走になった同僚もいた。企業進出は雇用機会の提供であることを中国政府にはっきりと理解させるべきである。巨大マーケットを失いかねないという人がいるだろうが、冷酷に言えば購買力のない人が何億人居ても商品マーケットではないわけで、日本の進出が遅れたインドやその他アジア諸国、更にはアフリカを製造基地とし同時に商品マーケットに育て上げれば、中国と同じ状況になるはずである。中国が希土類を売らないという戦力は予想されていたのだから、オーストラリアやロシアなどにもっと早くから資源投資をしておくべきであったわけで、道路と箱物を作るしか脳がなかった政治の貧困のトガは大きい。
 毒入り餃子に限らず中国製品の不買運動、先進技術製品の禁輸出や人材の流失防止等々も直ぐに思い浮かぶ戦略で、これを機会に、日本の中国への直接・間接の貢献とその交渉力を強く中国に知らしめておかないと、後悔しきれないほどの禍根を残すことになると思う。ここまでの中国は、トウショウヘイの閃きで、外国資本、外国技術、外国市場を安くて優秀な中国の労働力に結びつけ、日欧米を手玉にとってきただけの国であり、今であればヒットラースターリンの再現を防ぐことが出来ると思う。弱腰や優柔不断は、わが身にも人の為にもならないタイミングがあることは歴史の示すところである。