日本の過去は中国の将来像?

 また馬齢1年を重ねてしまった。年末にあたり、個人的問題以外でもっとも気になることを述べるとすると、中国のこれからということになる。
 中国が過大に評価され過ぎた年であったが、わが国に100年以上遅れて近代化を始めたわけで、世界を指導するにはほど遠い国のはずであり、日本の近代化の歴史に照らして中国の現状が判断できるのではないかと思う。
 私が中国のエリート達と親しく話す機会を持てたのは、勤めていた銀行が30数年前に中国の官僚や国営企業のエリートを毎年2ヶ月ほど日本での勉強会に招待していた時期である。「会計・経理」関係のセミナーを担当させられたが、彼らは収入と支出しか気にしない大福帳の発想で、投資効率とか「資本金」の概念が欠落していた。「資本主義」を否定したから、「資本」概念も否定しているのかと半分冗談のような妙な納得をしたが、簿記会計は近代産業の基本であると言って、会計全書など沢山の資料をお土産に差上げたことを昨日のように覚えている。あれからたった30数年、教えている中国人留学生のレベルから推察しても、とても世界の指導者レベルの国とは思われない。

軍国主義と恐怖政治の時代
 尖閣諸島問題、ノーベル賞問題、軍事力の増強、スポーツ振興、唯我独尊的発言等々の傍若無人、非常識とも言うべき中国の行動や発言が目立ち始めたが、その大半は戦前の軍国主義時代の日本帝国の行動にそっくりである。したがって、もはや外交ルートだけではまともな結果を生み出すことは出来ないはずである。

②国民を犠牲にした国家主義
 明治維新以降、富国強兵の掛け声で国民福祉を犠牲にして日本の近代化は図られた。植民地化されるのとどちらの選択が妥当だったかという意見もあろうが、赤紙1枚で戦場に送り出された軍国主義国家社会主義、つまりナチズムの体制にわが国はあったし、現在の中国もその体制を変化させようとはしていない。敗戦国となり、鬼畜米英により軍国主義から開放されるまで、民主主義のなんたるかを知らなかったし、自分の手で国民主権国家に脱皮することも出来なかった。

格差社会
 戦前の日本は、国と一握りの特権階級は豊かになったが、大いなる格差社会であった。現在の中国もそうである。

習近平体制
 習近平氏が胡錦寿氏の後継者に決まったといわれるが、毛沢東の信奉者であり、軍や民族派の圧倒的支持を受けている。政治改革推進派の筆頭と言われた温家宝首相の影響力は急速に低下し、失脚説すら流れ始めた。当面、自力による民主化は見込めないだろう。

⑤悪性インフレと経済バブル
 日本は野放図な高度成長の結果としての資産インフレと経済バブルのコントロールに失敗した。中国経済は既にその入り口にある。投機の好きな中国でこのところ株式市場が低迷を続けていることは大変気になる。早晩、日本の轍を踏むことになるのではないだろうか。中国発の大不況、これが無ければナチズムの一層の進展で、どちらにしてもトラブル・メーカーである。

 以上のようなポイントをチェックしただけでも、中国が自力で侵略性のない民主主義国家に脱皮する可能性は高くないように思う。ナチス・ドイツが勃興した時に、英仏米の軟弱外交が更に深刻な状況を招いてしまった。可愛い孫達が軍服を着るようになることは絶対に避けたいが、中国と日本はあまりに近い。平和ボケを続けて、気が付けば属国ということにはなりたくない。もっともその前に、中国発の大不況が起きる事になるかもしれない。 
 来年の年末にもっと暗い内容のことを書くことにはならないで欲しい。それにつけても、国内政治情勢の情けなさよ。