イギリスの夏(2)

 「サマーウォーズ」という日本のアニメーション映画があります。多少話題になった作品ですが、見逃していたのでテレビ放映を録画しておいて昨晩観ました。情報ネットワークに関するところは理解できませんでしたが、私のイギリスの夏と幾つかの共通点がありました。
 一つ目は、おばあちゃんが取り仕切る田舎の家にたくさんの家族が集まり、個性が全く違う人間が家族という共通点で協力して生活する楽しさを描き、同時に家族の大切さを教えてくれていることでした。
 二つ目は、天才的な才能を持った子供が登場することです。自分の孫が天才的であることを自慢するつもりではなく、外国人や平均的多数派日本人から外れた人間を排除し続ける日本の現状と将来を日本人として憂慮していることをお伝えしたいわけです。
 ニューヨークから来た8歳の男の孫は、IQが高いので公立のgifed children schoolに通っています。小学校3年生ですが、パソコンで方程式の勉強をしていました。本の虫で、編集されてない百科事典みたいな子供で、心配させられることも少なくありません。例えば、「風邪を引くとまずいから、寒くないようにして寝なさい」というと、「おじいちゃん、寒いと風邪をひくというのは俗説で、未だ科学的には証明されていません。例えば、インフルエンザはウィールスが原因で、寒さは自己免疫力を低めるから風邪をひき易くするという仮説はありますが、そもそも普通の風邪とは何かがはっきりしていないのです」と返してくる。科学的なことについては、全てがこのようなやり取りになるので、博学であり探究心が強いことには感心するが、子供としての可愛らしさは少ない。
 昨日4歳になったロンドンの孫娘は、日本語、英語、ヒブライ語を同じレベルで使う。日本語のレベルでも同じ年代の在日日本人、あるいは無口な日本の小学1年生の孫よりはるかに饒舌で、話の内容も濃い。娘が日本語で教育していることや父親がイスラエル人であることもあるが、ロンドンでは各種言語の違う友達を確保することが可能であることが背景にあるようで、おじいちゃんとしては、日本には1ヶ月間旅行で来ただけのこの孫の日本語力にはびっくりさせられた。もっとも、前述のニューヨークの孫も母親がドイツ人であるから、ドイツ語、英語、日本語の三ヶ国語を理解するが、最近は英語しか話してくれなくなっている。しかし、一時は日本語を全く使わなくなった私の帰国子女の子供達3人がまったく訛りの無い日本語を話しているので、将来、これらの孫が訛り無く三ヶ国語を使うことになる可能性は高いと思っている。
 これらの孫は日本国籍を留保している。彼らを日本の教育制度に連れ込むメリットはあるだろうか?あるいは将来、彼らが日本国籍を選択するだろうか?多分、彼らは日本の教育や社会で、外国剥がしを受け、いじめに遭うことになるのだろう。ひたすら内向きになり、外国語の勉強よりローカル語である日本語のしょうもない切れ端をひけらかし、外国留学は減少し、国力の基本である輸出貿易国としての能力を急速に失いつつある日本の将来は明るいものとは思われない。にも拘らず、優秀な外国人を取り込もうとせず、孫達のような変な日本人を有効活用しようとする気配すらない。東大を2回も落ちた岩手の田舎政治家が「アメリカ人は単純だ」と無知蒙昧の暴言を吐き、この金権政治家が次の首相になっても、政治的混乱を引き起こす「壊し屋」として民主党を分裂させたとしても、日本の混乱が長引くだけであろう。次の世界が米・中・印という超個人主義的・超資本主義的な大国のペースで動かされることになれば、日本は貧乏国に転落してしまうことであろう。孫達には、世界のどの国でも生きていけるだけの強さを持って成長して欲しい。