比較文化

国際感覚のリタラシー

前回は「金融リタラシー」を述べたが、最近の事例により「国際感覚のリタラシー」を考えてみたい。 先ず、オリンパスの事件である。エンロン、ワールドコム、リーマン等々、世界にはオリンパス以上に酷い強欲資本主義や企業統治の前例がたくさんあり、オリン…

真山仁「ベイジン」

中国問題を考える材料にツンドクとなっていた真山仁「ベイジン」を読んだ。読み出したら止められない面白さであったが、無理やりエンディングに持ち込まれた欲求不満と残尿感が残っている。日本の技術で中国に巨大な原発を建設し、北京オリンピックの開会式…

尖閣諸島問題

昔、ニューヨークで働き始めてすぐに気が付いたことは、ニューヨークではこちらが押し続けていないと押されてしまうということである。香港の怒鳴り合いと押し合いはもっと酷い。国際関係の仕事ではこれがグローバル・スタンダードで、こちらが譲歩したこと…

しあわせの隠れ場所

観に行くかどうか迷っていた映画である。迷った理由は、観ている間は人間の善意に幸せを感じ、極めて後味も良い映画であろうことは、そのストーリーや配役の妙から予想でき、観ても新しい発見が少ないと思ったからである。少数の人が本作を「偽善は見るに耐…

オリンピック

近況報告でブログを書いているが、他のことに追われだすと、あまり器用でないだけに昨今のように日記ではなく月記になってしまう。先日、前に務めていた大学のゼミ生が集まってくれて、楽しい一時を過ごしたが、多くの参加者がこのブログを読んでいてくれた…

アバター

SF物は嫌いであるし、Jキャメロンも好きでないし、予告編で観た毒々しい絵作りも趣味でないし、昔見た3Dは頭が痛くなったし、「アバター」は観に行かないことにした映画である。 しかし、これだけ話題になると、映画ビジネスを研究するものとしては、相…

岸田秀「唯幻論」

民主党新政権の対外政策の迷走は、岸田秀の「唯幻論」を思い出させてくれる。 岸田の考えは、体系的な思考というより思いつきと言った方がよいが、「日本は精神分裂病的である」「ペリーの来航を切っ掛けに、鎖国と言うナルチシズム的自閉症から、いきなり苦…

「重力ピエロ」と「チェイサー」

「重力ピエロ」の原作者については、「アヒルと鴨のコインロッカー」の原作者であり、若者に人気の作家であり、私の好きな仙台を舞台に選ぶことが多いといった断片的な知識しかない。したがって、「重力ピエロ」という奇怪な題名の映画が何を題材にしている…

「スラムドッグ$ミリオネア」後日談

5月4日の本ブルグに、「「スラムドッグ」という映画は、インドを舞台にしたことだけで、相当なドラマティック性を得てしまっているので、インドを選択し得られる自動的な加点部分を差し引くと、アカデミー賞を受賞した映画と雖も、どの程度優れていると言え…

金融危機の本質

①アメリカの高名な金融工学の学者が、飛行機ではなく汽車で学会に来ました。 「またなんで?」「統計データを整理していて、最近はちょくちょく、爆弾をかかえたテロリストが機内にいるんだ、ということに気付いたんです」 学者仲間はなるほどと思った。ただ…

おくりびと

米国アカデミー賞を受賞して以来、映画「おくりびと」が大変に話題になっており、今更のコメントが恥ずかしいくらいである。この映画は封切りになると直ぐに観に行った映画であり、年に何本かは封切りが待ち遠しい作品がある。現時点で言えば、「スラムドッ…

アンジェイ・ワイダ 祖国ポーランドを撮り続けた男

NHKは軍資金も人材も豊富である。昔、金融関係のドキュメンタリー制作をお手伝いして、他のテレビ局との大きな差を感じさせられた。したがって、NHKのドキュメンタリーには、世界的水準の作品が散見されても不思議ではない。6月15日に放映されたE…

 西の魔女が死んだ

私の家内はイギリス人で、子供3人、孫5人がいる。この映画の予告編を観たときに、これは観なければいけない映画だという義務感におそわれ、直ぐに梨木香歩の原作を読んだ。疲れていたこともあったが、書出しの部分でやたらと無駄に言葉が使われているとの…

 平泉

平泉の世界文化遺産登録が延期されたというニュースが流れた。 仙台に住んでいる時に、見逃すべきでないものの一つが平泉であると考え、車を使い一泊二日で平泉を訪れた。京都・奈良とはいかないまでも、少なくとも鎌倉の半分くらいは見るものがあるとの前提…

 ゼア・ウィル・ビー・ブラッド

アカデミー賞候補になった作品で好きなジャンルの映画であり、遅ればせながら観に行った。期待を下回ることはなかったが、上回ることもなかった。 シンクレアの原作は知らないが、原作に引きずられて、映画としての焦点が絞り込めず、長くなり過ぎたように思…

孫娘そして幸福とは

始めて会った孫娘がロンドンに帰ってから1週間となり、やっと日常的な精神バランスが戻ってきた。1歳8ヶ月の可愛い盛りの孫娘が帰ると、恋人と別れたような気分になり、いないことが大変に寂しかった。恋人の場合、直ちに単なる他人の関係に変化しうるから…