アバター

 SF物は嫌いであるし、Jキャメロンも好きでないし、予告編で観た毒々しい絵作りも趣味でないし、昔見た3Dは頭が痛くなったし、「アバター」は観に行かないことにした映画である。
 しかし、これだけ話題になると、映画ビジネスを研究するものとしては、相当に気になって来ていた。最後に背中を押したのは、監督自身も認めているが、「ダンス・ウィズ・ウルブス」のSF版であるとする声であった。アメリカには、「アメリカがテロリストと戦っている時に、本作はイランやアフガニスタンのテロリストに加勢するものだ」とする批判まであると聞くと、観に行かざるを得なかった。観るなら3Dで、少し遠い映画館まで行くことにした。
 久しぶりに混み合った映画館で、メガネの落ち着きも悪く、嫌な予感がしていた。ところがである。始まると映画に引き込まれた。既述の弱点はあるが、それを凌駕するだけの「見世物」になっている。しかもアメリカの現状に批判的であると観る方が素直な内容で、良くこのシナリオに120億円の製作費を投じたものだ。
 兎に角、観なければ話にならない映画。ハリウッドの底力を感じさせられた映画。質を落とさなければ、ハリウッドとその上映劇場は、当面は3Dでご飯が食べられるだろう。