岸田秀「唯幻論」

 民主党新政権の対外政策の迷走は、岸田秀の「唯幻論」を思い出させてくれる。
岸田の考えは、体系的な思考というより思いつきと言った方がよいが、「日本は精神分裂病的である」「ペリーの来航を切っ掛けに、鎖国と言うナルチシズム的自閉症から、いきなり苦労しらずのぼっちゃんが、いやな他人たちとつきあわなければ生きてゆけない状況に突然投げ込まれたのである。」(「ものぐさ精神分析」)その結果、外国との関係にスムーズに迎合・適応しようとする自己と、そのような自己を偽りの自己とみなして、幻想的に美化された内的自己とに分裂することになってしまったと考える。外的自己は開国論、内的自己は尊王攘夷論といった分裂になる。
 この精神分裂症を克服することなく近代化を推し進め、外国に対して、傲慢に強張るか卑屈な対応を示すことにより分裂した自己を糊塗することで現在に至っている。この観点から観れば、最近の鳩山、小沢の両お坊ちゃまの行動パターンの大半が説明できるように思われる。それだけの話であれば、誠に空しい。