「サザエさんと株価の関係」

サザエさんと株価の関係―行動ファイナンス入門」(吉野貴品、新潮新書)という本があります。ポイントを言えば、昭和44年から放映されている長寿アニメ「サザエさん」の視聴率で、景気が分かり、株価が分かるとしております。確かに、サザエさんの視聴率が上がると、株価が下がるという結果がグラフからも見てとれます。何故でしょうか?「サザエさん」は日曜日の18時30分から放映されています。日曜日の午後6時半からテレビで「サザエさん」を観る生活は、豊かで望ましい生活でしょうか?景気が好ければ、家族で遊びに出て、どこかで食事をと考える時間帯です。別荘から嫌な東京に戻り始める時間帯です。つまり、「日曜6時半からサザエさんを観ること」は「劣等財」で、豊かになると需要が減少するようなサービスだと考えられるということです。したがって、景気が良いと「サザエさん」の視聴率は下がり、株価は上昇し、景気が悪くなると逆になったと考えられます。ファイナンス、特に資産運用の世界では、ここ20年くらい、認知心理学社会心理学を応用し、ファイナンス行動を人間行動として整理しようとするグループが台頭してきており、実に様々な研究が行われてきました。金融取引は利益も損失も大きいですから、役に立つと考えられると、調査・開発に必要なカネと人材が迅速に調達されます。この分野を「行動ファイナンス」と言いますが、その象徴としてカーネマンとトバスキーがノーベル経済学賞を受賞しました。

 ここ2年間、世界的に株価は下落し、景気見通しも暗さが加速してきております。サザエさんと株価の関係を逆に使えば、テレビの視聴率は上がる時期のはずです。しかし、視聴率が上がっても購買行動に結びつかなければ、広告費は削減されます。テレビ局の給与が下げられたのはそんなことからでしょう。映画はどうでしょうか?観劇やコンサートに行くことに比べれば、映画は割安で、観劇を映画鑑賞に切り替える人もいるはずです。しかし、1人1800円は安くはありません。DVDを借りれば、何人で見ても300円程度です。ちあきなおみ絶唱に「秋田に帰る汽車賃が、あれば、一月生きられる。だからよ、だからよー、帰れないんだよー」というのがあります。1800円あれば、コンビニ弁当が3回食べられます。アメリカの教科書には、「映画支出は、不況期の前半での落ち込みは少ないが、後半期になると急速に落ち込み始める」とあります。映画代金が割高と言われる日本では、不況になると一層早く映画需要が落ち込むことになり、「サザエさん」の視聴率が上昇することになるものと思われます。
 
 新年に入り、資本市場には多少の明るさが感じられるようになりました。景気は心理とも言われますので、株価の回復が実態景気の回復を招くことも十分に考えられます。新年に期待したいものです。