ゼア・ウィル・ビー・ブラッド

kashiwaoak2008-05-13


アカデミー賞候補になった作品で好きなジャンルの映画であり、遅ればせながら観に行った。期待を下回ることはなかったが、上回ることもなかった。
シンクレアの原作は知らないが、原作に引きずられて、映画としての焦点が絞り込めず、長くなり過ぎたように思われた。石油成金、キリスト教新興宗教、暴力はアメリカ社会とその歴史の象徴であり、それを露骨と言えるほど強く正面に押し出している。アメリカを最も進んだ望ましい国と考えるべきではなく、将に新興新世界であることを改めて感じさせられた。言うまでもないが、ブッシュ、チュエイニーの正副大統領とも石油資本をバックにしており、新興宗教の票が当落を左右し、銃砲ロビー活動が強く社会の暴力性は収まらない。アカデミー作品賞を受賞した「ノーカントリー」も、暴力性と反教養主義を描いていた。緑や水のない土漠の中を転げまわるような風土から、優しさを生み出すことが可能なのであろうか?このような風土で育った人々がアメリカの多数派を占め、そのような国が世界を左右していると考えると恐ろしくなってくる。
タイタニック」のバカバカしさを悟ったということかもしれないが、ここ何年かのアカデミー賞はインデペンデント系の作品が強い。しかし、「ノーカントリー」「ディパーテッド」「クラッシュ」と殺伐とした作品が続いていることは、平和ボケした島国の人間としてはやはり気に掛かる。
{映画愛好家としては、5点満点の4点、映画投資家の観点からは、アカデミー賞抜きには投資回収が無理かもしれないので3点。}