尖閣ビデオの流失

 流失した尖閣ビデオの内容は、海上保安庁の現状や艦艇の損傷状況から予想した線のものであった。主権在民で、国民の一人としての主権者である私としては見てみたいと思っていたし、公開すれば多分中国漁船の傍若無人の振る舞いが確認され、日本に有利な国際世論が形成できると思っていただけに、良くぞリークしてくれたと思っている。Yahooなどの簡便なアンケートの結果を見ても私と同じように感じている国民が80%程度にのぼっているようである。
 しかしながら、マスコミの報道はどうでも良いビデオ流失の犯人探しの報道ばかりで、日本の領海で盗漁をし、海上保安庁艦船に攻撃的で傍若無人の振る舞いをした中国漁船、更にはその問題を反日問題に刷り帰る中国と今後どのように向き合っていくべきかという議論やその具体的な戦略やコンセンサスづくりの論調はほとんど目にとまらない。このように島国の中の仲間内の喧嘩に問題を絞り込み、本当の難問に目を瞑り続けてきた「無能レベルの対応」が日本の可能性を小さくしてしまい、80年代後半からの「失われた20年」を生み出し、最近の閉塞感や無力感を生み出してきたことに何故気付かないのであろうか?
 流失犯は政府が隠そうとしていることの真実を内部告発により国民や世界の目に晒したものと思う。内部告発とは「組織内での行動は、通常外部からは不透明なものであり、そこでもし不正や悪事などを働いていたとしても、それを外部の者が認識する事は困難である。つまり、外部からは見えにくく、不正や悪事をしても隠し通しやすい。しかし、その組織内部に所属している者(あるいは所属していた者)であれば、そのような行為を容易く認識する事ができる場合がある。そして、それを認識した組織内の者が何らかの要因により外部へ通知、つまり内部告発することで、外部からは見えなかった組織内での不正や悪事が暴かれるのである。・・組織が不正・悪事を働くことは、国家・国民・消費者に対する重大な犯罪行為であると言え、内部告発はそれを正す行為であることは明白であり、組織をより健全な活動へ修正するためには必須のものであると言える。」(ウィキペディア)とし、内部告発者を保護するべく、日本でも2004年(平成16年)に「公益通報者保護法」が成立した。
 本件が簡単に「公益通報者保護法」に該当するか否かは法律条文が難解で良く解らないが、立法趣旨や国益の観点からは流出犯探しや政府の責任追及は程ほどとすることが望ましいと思う。そんな瑣末な問題に時間を空費するのではなく、不況対策、対中国戦略、TPP、北方領土財政赤字少子高齢化等々の山積した難問に取り組むべきである。大赤字で操業停止した工場で草むしりの方法を議論するように、本当の問題解決が出来ない場合にどうでもよいような瑣末な問題に焦点を当てる「無能レベルの対応」をこれ以上続けるべきではない。Yahooの簡便アンケートを見ても、80%程度の人々が流出犯を支持しているようである。