東京国際映画祭

 10月23日から31日にかけて、六本木ヒルズを中心に第23回東京国際映画祭が開かれた。正確に言えば、映画コンテンツを中心とした見本市のようなTIFFCOM(第7回目),新規企画のビジネス開発市場のTPGが併設され、カンヌ映画祭を代表とする映画国際ビジネス・プロモーションを目的として経済産業省などが梃入れをしてから、これで7年目になる。
 一昨年は、自分のプロジェクトをTPGに出展したので、全体像が把握できるようになったが、六本木ヒルズの一部フロアー、映画館等を利用しているに過ぎないので、部外者には全体の流れが理解しずらいし、改善の余地がたくさん残されているように思われる。
 多くの映画が六本木界隈で上映されるが、今年は、映画祭のコンペティション参加作品を中心に結構な数の映画を観る事が出来た。グランプリの「僕の心の奥の文法」(イスラエル)は観る事が出来なかったが、審査員特別賞の「一枚のハガキ」や最優秀監督賞の「サラの鍵」などは観る事ができた。グランプリのベルグマン監督は二度目の受賞で、このところ戦乱の小国イスラエルの映画界の活躍には目を見張るものがある。イスラエルや南北分断の韓国のように緊張の続く国からは良い映画が生み出されるようである。
 日本映画では、「一枚のハガキ」(新藤兼人監督)と「海炭市叙景」(熊切和喜監督)の2作がコンペティションに参加したが、両作とも完成度が今一歩であったと思われる。特別招待作品であった「レオニー」や「武士の家計簿」は、日本映画も悪くないことを示していると思うが、日本映画が国際的に高く評価されるには足らないものがあると思う。CTVで、久しぶりに黒澤明の「蜘蛛城」を見たが、1957年に日本があれだけの圧倒的存在感を持った映画を作ったことを考えると、ここにも停滞ないし後退をしている日本の実力の例示を見ないわけにはいかない。