「カティンの森」は現代日本の問題

 2008年7月5日のブルグに、アンジェイ・ワイダの映画「カティンの森」について書いているが、やっと観ることができた。家から5分のユナイテッド・シネマが単館系の話題作を1周遅れの割り料金で観せるプログラムを始めてくれたので、大変助かっている。
 弱小国ポーランドは、スターリンソ連邦ヒットラーナチス・ドイツにより分割され、将校達は粛清され、歴史は隠された。A・ワイダは、この重苦しい歴史を奇をてらわずに淡々と描くことにより、深みのあるメッセージを送り出している。日本の軍国主義は多くの歴史を隠し、戦争責任さえ自分らでは判断・反省せずに今日に到っている。
 ロンドンのポーランド人達は粗野で無礼である。イスラエルパレスティナに対し、自分らの先祖達が蒙った悲劇に近いひどい仕打ちを続けている。弱者、犠牲者が正義を実行する保証はまったくない。多くの歴史は力により作られ、多くの場合勝者が正義である。
 私の66年の人生経験で言えることは、アメリカによる日本の占領は総じて大変に良かったということである。日ロ不可侵条約を無視して参戦してきたスターリンソ連は、多くの日本人をシベリヤ送りにしただけではなく、未だに北方領土を返還しようとしない。昔、日本の軍国主義の犠牲になった中国や朝鮮は、日本の生産技術を盗んだだけではなく、日本の領土を侵害しようとしている。仮に、私の祖父や父の世代の日本軍国主義が、中国や朝鮮に於いて戦争犯罪行為を行ったとしても、その子供や孫の世代の日本人まで当然に犯罪者であるとする近代法は存在しない。
 日本・中国・米国・正三角形論などという馬鹿げたブレイン達の空論に基いた鳩山外交は大きく破綻し、日米関係を急速に悪化させてしまった。12億人を食わせるために資源の確保と世界覇権を狙っているような新興大国と世界の警官を気取って国力をすり減らしてしまった米国の狭間で、ポーランドの悲劇を避ける道はハッキリしているように思う。アメリカは多くの問題を抱えた国ではあるが、戦後の占領政策とその日本への大きなプラス効果を疑うわけにはいかないし、10年近く過ごしたアメリカでの経験から判断して米国は信ずるに値すると思うし、その透明度は極めて高い。これに対して未だに全体主義国家であるロシアと中国の透明度は極めて低い。両全体主義国家に於ける権力構造や帝国主義軍国主義者の国家行動に与える影響力さえ、外部からでは良く見えない。スターリン毛沢東といった独裁者の後裔たちが権力闘争していると考える方が自然であろう。
 ポーランド等とは比較にならない強国日本ではあるが、当たり前のことを見損ない状況判断がひどく混乱していることを認識すべきである。追い込まれてしまってからでは遅すぎ、ポーランドのような惨めな弱者になってしまう可能性がある。敗戦後、ソ連に占領されていた国々との比較でアメリカによる占領を評価すべきであり、強大な全体主義国家二つと隣接した島国である観点を忘れずに、日米関係や沖縄問題を考えるべきである。
 「カティンの森」は人ごとではない。