コップの中の嵐(3)

 民主党代表選挙で菅総理が大勝した。国会議員に限った得票比率はほぼ拮抗していたが、選挙を仕切った小澤幹事長が西も東も分からないような新人議員から受けた恩返し得票を差し引いて考えれば、予想以上の大勝と考えられる。軒を貸しただけの民主党が、薄汚い連中に母屋を取られなくてよかったと思う。
 今回の代表選挙は、私が夏休みであったこともあり、両候補の主張やニュースを通常の総裁選挙よりはるかに多く見聞することが出来、アメリカの大統領選挙を見ているような気分になった。これが民主主義だとまでは感激しないが、少なくも与党が密室で順送りのように作り出してきた総理・総裁よりは両候補の話をテレビを通じて、より身近に見聞することが出来、これは予想以上に面白かった。最大の収穫は、闇将軍といわれる小澤氏が本気になるとどの程度の人物なのかが垣間見えたことで、予想以上につまらない男であることが曝け出されたように思う。ちょうど今、民主党代表選挙直前の両候補のスピーチ録画を見たところあるが、この最終スピーチを採点すれば、菅総理80点、小澤幹事長50点と言った印象である。先ず、小澤さんのスピーチは出だしに痰が絡んだ歳を感じさせるスタートで、アメリカの大統領選挙であれば、これだけで落選に値する減点で、演説内容も情緒的で、自分中心、自己顕示を強く感じさせ、とても大物政治家の演説とは思われなかった。これに対し、菅さんのスピーチは市民運動家らしく、本当の聞き手である民主党国会議員に訴えかける調子で、仮にこのスピーチで投票を左右する議員がいるのだとすれば、この演説内容の差は大きかったのではないだろうか。この辺に、親の地盤を引き継いで27歳で国会議員になった男と市川房江さんの走り使いから政治の世界に入った男との状況に応じた対応力の差が明確に出たように思う。
 菅さんの勝利や鈴木宗男有罪確定を機会に、日本の政治スタイルが大きく変化することを期待したい。その為には、小澤さんが党を割り、民主党のクリーンさが一層明確になる方が望ましいかもしれない。右を向いても左を向いても金権政治の臭いがする民主対自民の対決では、とても希望が持てない。もっとも、小澤さんの言うことが予想以上に陳腐であることには驚かされたが、これは菅さんの方に遥かに希望に満ちたヴィジョンを感じることを意味しない。官僚依存からの脱却、地方分権の強化等々のスローガンは、国の効率性を落とす愚策で間違いであると思う。老化により頭のメッセージが体の末端に届きにくくなった場合、直すべきは神経の伝達経路であり、神経系統を切断してしまう発想はとらない。
 菅さん、大勝したのだから、思い切った政治をやって見て下さい。