読書

西部・佐高「学問のすすめ」

先日、仙台の古本屋で佐高信「タレント文化人100人斬り」を買い、帰りの新幹線+1時間で一気に読ませてもらった。この著者の代表作が何なのかは知らないが、辛口評論家と言われて、それなりに知られた存在ではある。ビートたけしや西部遵のように複数回…

古賀茂明「日本中枢の崩壊」

時の人である古賀茂明さんが経済産業省を退職されたのを機会に、積読になっていた「日本中枢の崩壊」を拝読した。感想を一言で言えば、予想外のことがほとんど書かれていない陳腐な内容で、国内の政治家と官僚のことにしか触れてない視野の狭い本。この程度…

長谷川英祐「働かないアリに意義がある」

川島隆太、茂木健一郎、養老孟司等々、脳科学者のような顔をして大衆に向けて「脳科学」を説く連中の話は、ほとんどがマスコミや出版社と共謀して作り出したフィクションに過ぎないという話を聞いたことがある。確かに、私が専門とする「ファイナンス」や「…

同窓会と村上龍「イン・ザ・ミソスープ」

昨日19日は、高校の卒業50周年同窓会であった。最近は5年毎に同窓会をやっているから、日常的に遭っている顔も少なくなく、逆に参加しない連中には卒業以来一度も顔を見ない連中が多く、久しぶりの非常に懐かしい顔は極めて少なかった。定員400人の…

ドラッカーの勘違い

昨日に続きドラッカーを語りたい。彼の思索を考える場合、彼がヨーロッパ出身であることは非常に重要だと思う。日本経済新聞社の連載企画「私の履歴書」をまとめなおした「知の巨人ドラッカー自伝」にあるように、ドラッカーはウィーンに生れ、フロイトなど…

ドラッカー紅衛兵?

ある人が書かれた経営の本を読んでいる。特別に難しい日本語で書かれているわけではないが、実に難解である。著者を良く存じ上げており、いい加減なことを書いたり、言われたりする人物ではないだけに、理解出来ないのは当方の力不足だろうと考えるが、著者…

池田純一「ウェブ×ソーシアル×アメリカ」

知人に薦められ読むことにした。サブタイトルの「全球時代の構想力」にも惹かれたが、実際の内容は「Google,Apple,Facebook, Twitterはなぜアメリカで生まれたのか?」という帯の記述に近い。 博学な著者の記述と思考法に引き込まれて一気に読了した。望遠鏡…

トム・ハートマン「ADD/ADHDという才能」

事業構想論や起業ファイナンスを教えていて、気になることがある。それは、新しい事業を構想する能力は、生まれつきのものなのか否か、どこまで教育できるものなのかということである。「天才は99%の努力と1%のインスピレーションからなる」とエジソン…

黒木亮「獅子のごとく」

数年前から、突然の腰痛に苦しんでいる。幸い、慢性の腰痛にはなっていないが、何かに拍子に突然襲ってくる。腰痛が治ったと思ったから、昨年は久しぶりにイギリスの田舎に行き、素晴らしい夏休みを過ごしたが、その最後の二日間は腰痛に襲われ、また弱気に…

A.レボー「バーナード・マドフ事件」

リーマン問題の影に隠れてしまったが、マドフによる6兆円とも言われる金融詐欺事件は、現在の金融システムや現代アメリカ社会を考える上で、もっと注目されるべきだと思っている。ツンドクしてきた本書は、マドフ事件を取り上げた数少ない著作である。 本書…

A.ソーキン「リーマン・ショック・コンフィデンシャル」

中断していたA.Sorkin "Too Big To Fail"を読み終わった。 リーマン・ショックの金融危機を丹念に実名で書き出した本であるから、面白くないはずがない。訴訟社会で実名を使って記述しているからには信憑度は高いはずで、よくここまで調べ上げたものである…

川島博之「農民国家・中国の限界」

昨日、期せずして「農民国家・中国の限界」を書かれた川島博之さんの講演を聞く機会に恵まれた。年末の当ブログで「日本の過去は中国の将来像?」として、私の経験と直感から中国問題を述べたが、川島さんがもっと体系的な分析を踏まえて類似の結論を導かれ…

S.パタースン「ザ・クオンツ」

M.ルイス「世紀の空売り」が、これまであまり書かれることのなかったアメリカ金融業界の言われているほどの能力がなく、言われている以上に強欲で利己的な金融関係者の姿を描き出したことを高く評価したが、金融書としてはS.パタースン「ザ・クオンツ」…

マイケル・ルイス「世紀の空売り」

80年代半ば、証券化商品開発担当として投資銀行の聞き取り調査を行った。不思議だったことは、ほとんどの投資銀行の証券化商品開発責任者が元ソロモン・ブラザーズ勤務経験者であり、しかも品格にかける二流アメリカ人といった印象を持たされ、高度な数理…

藪中三十二「国家の命運」

構えてしまうような題名の本ではあるが、仙台との往復で読めてしまう新書である。しかし、何様か解らない連中が売らんがために世の流れに迎合して書いた小遣い稼ぎの本ではなく、事務次官まで務めたプロ外交官の書かれた物であるから、それなりの敬意を持っ…

読むと損する本

読んで損したと思った本が2冊続いたので、私がAmazonに書いたレビューをご紹介したい。①山下真弥「ハーフはなぜ才能を発揮するのか」(PHP新書) (中身のいい加減さに愕然とした) アメリカ人とイギリス人のハーフである愚妻と、既に30代になった3人…

外交敗戦

尖閣問題を考える参考に、ツンドクになっていた手嶋龍一「外交敗戦 130億ドルは砂に消えた」を読んだ。 ここ半年で、「ウルトラ・ダラー」「スギハラ・ダラー」と手嶋さんの本を3冊読んだが、本書がベストである。何方かが「小説は無駄な情景描写が70,8…

佐藤優「国家の罠」

鈴木宗男有罪確定を機会に、積読になっていた本書を読むことにした。5年も前から評判になっていた本書をなかなか読む気にならなかったのは、直感的に信用できる本ではないと感じていたことと読みにくい文章であったことによる。「講釈師、見て来た様な嘘を…

「スギハラ・ダラー」「ウルトラ・ダラー」

面白い読書で厳しい残暑が忘れられればと、手嶋龍一さんの「スギハラ・ダラー」を読んだ。小説家としてのデビューになる前作「ウルトラ・ダラー」が大変面白かったので、本作も期待して読んだ。しかし、残念ながら、前作が傑作すぎたのか、著者の個性が悪い…

「ガラスの巨塔」

本書を小説と思って読む人はいないはずで、将に今井氏の部分的自叙伝である。アングロサクソンの社会では、社会的に活躍した人物の多くが自叙伝をまとめ、当然ではあるが自己正当化を図る。対立した人物の自叙伝を読み比べることで、歴史がより正確に理解出…

「社長になれなかった男」

人間誰しも人生を生きているから、一冊だけは本が書けると言う。「ガラスの巨塔」という元NHK「プロジェクトX」のプロデューサーが書いた自叙伝的小説を面白く読んだので、ツンドクになっていた本書も読むことにした。ともに、著者が素晴らしい業績を残…

「リーマン・ブラザーズと世界経済を殺したのは誰か」

日本人としては投資銀行の内幕を最も良く知っているはずの桂木さんが書いた本であるから、大いに期待して読ませていただいた。もっとギラギラした内実を聞くことを期待していたが、大半は別の人が書いたのではないかと思われるほど評論家的で、行儀が良すぎ…

「強欲は死なず」

「金融ゲームの実態を活写したフランスのベストセラー」という呼び声で読んでしまったが、読んだことを悔やんでいるし、時間とカネを返して欲しい。本書はまともな金融のインサイダーが書いた本ではないインチキ金融本である。小説だからインチキということ…

北沢秋「哄う合戦屋」

知人から、北沢秋さんの「哄う合戦屋」をいただいた。 時代小説はほとんど読まないが、読み出すと面白くて一気に読んでしまった。主人公の「石堂一徹」の不器用な生き様、「若菜」というお姫さまの明るく天衣無縫な性格設定、そしてこの二人の微妙な関係を楽…

N.N.タレブ「まぐれ」

著者N.N.Taleb氏の名前は “Dynamic Hedging :Managing Vanilla and Exotic Options”(1997)を購入した時期から印象に残っている。知られたトレーダーではなかったし、有名な投資銀行で働いていたわけでもなかったが、エキゾチック・オプションのトレーデ…

ジャック・アタリ「金融危機後の世界」

アメリカの影響を強く受け過ぎた考え方に、フランス人が鋭く異論を聞かせてくれることがある。そんな期待感を持って、本書を読み始めた。 期待は見事に裏切られた。本書は、前回のブログで賞賛したジリアン・テッドの本の対極にある本である。つまり、テッド…

ジリアン・テット「愚者の黄金 大暴走を生んだ金融技術」

旧日債銀粉飾決算に関する経営者責任の判決で、最高裁が高裁へ差し戻したと報ぜられた。ほほ同様に見える旧日長銀の無罪判決と微妙に相異する根拠が議論されているが、両行の仕振の違いや大野木元長銀頭取の誠実さを個人的にも知る立場で言えば、相異する理…

インチキな連中

ベスト・セラーを続けているという知的創造力開発に関する本を読んだ。著者x氏は有名国立大学の名誉教授であるから、それほどいい加減な人ではないはずであるが、学者の書いた本にしては、原典の引用とか参考文献がほとんど明示されていないことが気になっ…

大澤さんと水野さん

金融恐慌本読み比べの一環として、大澤和人さんの「サブプライムの実相――詐欺と略奪のメカニズム」を読み始めた。大澤さんは、私が80年代の半ばに証券化商品開発を始めた時期に、外資系投資銀行で証券化業務をやっておられた日本人の草分けのひとりである…

「金融恐慌本」読み比べ(2)

竹森俊平「資本主義は嫌いですか」の面白い点は、バブルは経済成長に必要であると主張するティロールのような経済学者の紹介であった。彼らの主張は、動学的効率性の条件(その経済における投資収益率が成長率を上回る)が満たされない場合には、バブルが経…