池田純一「ウェブ×ソーシアル×アメリカ」

 知人に薦められ読むことにした。サブタイトルの「全球時代の構想力」にも惹かれたが、実際の内容は「Google,Apple,Facebook,
Twitterはなぜアメリカで生まれたのか?」という帯の記述に近い。
 博学な著者の記述と思考法に引き込まれて一気に読了した。望遠鏡のように遠くをはっきり見せられたと感じる個所と、壊れた万華鏡のように難解な個所も少なくなかった。ともすれば、表面的な技術論や現象論が多い類書に比較すると、アメリカという風土や社会に結び付けてこれらのブレイクスルーを整理し、たくさんの鋭い指摘がなされている。例えば、

「兄弟社会のアメリカVS父子社会の欧州」
「プロデューサーの才能に依存したアメリカの映画製作は、才能あるエンジニアによる起業に近い。」
「ウェブビジネスの多くは、利用されることで初めて価値が生まれるビジネスで、ここから、ユーザーの賛同や共感を如何に得るかが今日のウェッブ企業には不可欠の戦略になる。」
「科学的合理性を追求するGoogleは「真」、ユーザーという人間的なインターフェイスを通じて共同体の構築を進めるFacebookは「善」、触覚を通じた自在性を売りにすることで、ヒューマンタッチを具体化させたAppleは「美」、というようにそれぞれ基本的な価値を実現している。」
「ウェブは、AmazonやeBay、そしてGoogleによって電子の市場(いちば)としてスタートし、Facebookによって電子の広場を実現した。」

 新書の枠を大きく超えた一読に値する力作であるが、これまでの現象を分析することに紙面が割かれ過ぎて、これから将来の変化とそれに対応した「全球時代の構想力」に関する具体的な記述が少ないことが残念である。歴史を知れば、将来のことは自ずと洞察できるとするのが著者の考え方かもしれないが、知的興奮を感じさせる本だけに、更に理解しやすく整理し、これからの展望に十分な紙面を割いた次の著作を期待したい。