日々これ好日

 イギリスまで大急ぎで送らなければならない書類があり、近くの小さな郵便局、やや遠くの大きな郵便局、そして宅配便のセンターを回って来たが、郵便局は土曜休日、宅配便はしばらく待たされたあげく受け付けられないとのことで、何のためにバタバタしたか判らない2時間を失ってしまった。読んでない新聞が山積みになり、途中まで読んだ本が3冊ソファーに投げ出したままになっている効率の悪い人間として、またも大事な時間を浪費してしまったことを悔いている。書かねばならない本もほとんど進んでいない。如何に時間を上手に使うかといった人生の達人みたいな本を出版している知人の顔を思い浮かべると、情けなさはひとしおである。
 しかし、冬晴れの素晴らしい日である。久しぶりに、生オニオンの大きなスライスが効いているアメリカ流のクラシック・ハンバーガーも食べることが出来た。去年の今頃は腰痛で、杖にすがってトボトボと歩いていたわけであるから、早足で歩くことが出来、信号を走り抜けることが出来る日々は好日であるとも言える。
 ある人が「日々これ好日」などというような人生を送っていてはだめであると書いていた。このチンピラ評論家は何様のつもりか知らないが、たくさんの欺瞞的な本を出版している。このチンピラと親しい人から実像を聞かされているだけに腹立たしい。まあ、過激な言葉で正論を言っているだけであるから、「銀行にカネを預けるな。投資信託を買いなさい」と言って読者に大損をさせたはずの中年主婦よりは罪深くはない。こんな偽者評論家達が跋扈してしまうのは、我々の知的水準が低い証拠なのだろう。
 私もついこの間までは、機会費用を強く意識して、「日々これ好日」などと考えてはダメであると考えていた。しかし、人生も60台半ばになると、迷いが出てくる。冬晴れの素晴らしい日を心から楽しむべきなのかもしれない。