「ダークナイト」これが映画だ!?

 
 まじめな学生から「ダークナイトの試写を見てきたが、鳥肌が立つほど素晴らしかった」と聞かされた。バットマン・シリーズの最新作で、私の好みではないSFアクションで、彼の話に加えて、新聞その他での評判がこれほど高くなければ、オリンピックを犠牲にして観に行くことはなかったはずである。
 歴史のあるバットマン・シリーズはほとんど興味がなかったので、たくさんの登場人物や背景についての知識は不十分で、本作も完全には理解出来なかったが、何故この映画がアメリカで興行記録を塗り替えるほどにヒットしているかを理解することは出来た。超大型トラックが縦に一回転するようなシーンを大型画面の大音響で見せることは、映画以外のメディアでは不可能である。しかも、本作は単なる勧善懲悪ではなく、明と暗、善と悪といった二面性が単純には対比できるものではないといった哲学的問題も提起している。この観点から、単なるエンタテイメント・オンリーと言い切れないところが面白い。映画が大ヒットする前提条件であるアメリカの大衆が、我慢しながらもこの複雑な話を楽しんだという点にも興味を惹かれる。アメリカの大衆が、暴力と破壊だけの映画を楽しんでいるようでは、世界の状況は改善しないのだから、本作が「タイタニック」に迫る大ヒットになりつつあることは結構なことである。
 しかし、映画として存続出来る作品が、子供を利用した作品と本作のような大鑑巨砲作品だけになってしまうことで良いのであろうか?そうは言っても、オリンピックのテレビ中継を観ずに映画館に足を運ばすことは容易なことではない。