理解出来ない「崖の上のポニョ」

 
巨匠宮崎監督が、「崖の上のポニョ」という子供向けを意識した作品に、どれほど努力されたかというNHKのドキュメンタリーを観、半ば義務感で7歳と5歳の孫を連れて観に行った。
宮崎アニメの半分は観たと思うが、絵のゴテゴテした感覚が嫌いであるとか話が不明確で理解出来ないとかいった作品が多く、私は好きになったことはない。勿論、世の中で高い評価を受けていることには敬意を感じており、私の理解力が不足しているのかもしれないと考える程度の謙虚さは持っている。また、妙な新興宗教が流行ることよりは弊害は少ないとは思っているし、人殺しを専らとするTVゲームよりも悪影響はないはずである。それでも、宮崎アニメの影響力があまりに大きいだけに、それに応じて責任も大きくなることを強く意識することが求められるはずである。 
 
主人公の少年が5歳であることから、孫たちが楽しんでくれるはずだと思っていた。しかし、64歳の私にも理解できない部分が多く、困惑している。これに関してはたくさんの方が指摘されているので、いくつかの問題点を例示することに留めるが、保護者が説明に窮するような子供向け映画を作らないで欲しい。
(問題点1)アンデルセンの「人魚姫」にアイディアがあるとのことであるが、大局としては、「ポニョ」という可愛い人面魚の気紛れで津波になり、たくさんの人命や町が失われたような話だとすれば、製作意図は何なのだろうか?原作「人魚姫」とは違う話になっているだけに説明責任がある。
(問題点2)そのポニョを人間にして、5歳の宗助に全責任を負わせてしまうという話らしいが、童話の世界の設定ではなく現実世界的な設定で話が展開されるので、理解出来ない。
(問題点3)ポニョの母親が観音さまで、父親が魔法使い風の妙なフジモト氏である設定は何なのだろうか?
(問題点4)親を名前で呼び捨てる慣習のほとんどない日本で、実の親子であるらしいことの理解に手間取るようなシナリオにしたこと、旧帝国海軍のような救援隊やイージス艦のような軍艦が突然出現すること等々、話の展開の細部でも整合性を欠いている。
(問題点5)交通ルールを無視して暴走し、勝手な行動が多い人間を母親に設定した映画を児童向けに作る意図は何か?
(問題点6)子供向けの映画で、現実世界と空想世界の境界を明確にしない手法は危険で、混乱を招いてしまうとは考えないのだろうか?

等々、他にも沢山有り過ぎて、正常な判断力で作られた子供向け映画とは思われない点が多い。ゼニさえ儲かれば、「裸の王様」が乱心して子供を混乱させる制作をしても、関係者は何も言わないし言えないのだとすれば、あまりに問題があるのでないだろうか?
幸い、うちの孫どもは知恵遅れのようで、「BAKABAKA・・・とモールス通信をするところが一番面白かった」などと言っているので、我が家は混乱から救われている。