嘆くまい、嘆くまい

 また、素晴らしい秋晴れの土曜日である。関東の秋から冬の晴天は本当に素晴らしい。世界的に見てもそうである。根雪やツルツルの路面に覆われる北国の冬。夜間気温がマイナス20度にもなるシカゴやニューヨーク。日照が短く湿りきったロンドン、パリ。
関東の冬の素晴らしさは、ある外国人に強調されるまで気がつかなかった。仙台に住んでみると、路面にうっすらと雪が残り始めると、肩がこって仕方がなかった。それでも、秋田の人に言わせれば、仙台の冬は天国である。
自分が如何ほど恵まれているか、あるいは恵まれていないかを、正確に認識することは容易ではない。関東の冬をカリフォルニアの冬と比べて嘆くのは的外れも甚だしい。一方には、先祖伝来の農地を徐々に売却し、週末になると駐車料金の百円玉をバケツで集めている億万長者が居られる。ほとんど仕事もないのに、黒塗り社用車で送迎される相談役や会長さんも多い。順調に勤め上げ、年金と資産で世界旅行される老後を送りながら、経済の現状を嘆かれる方も居られる。他方、通勤で通る新宿中央公園には、ブルーのビニールで雨露をしのがれているホームレスの方々が結構たくさんおられる。新宿の地下道にはもっと沢山の人がいたが、排除されてしまった。フリーターとして搾取され、「蟹工船」の世界に同感する若者も増えたようである。
このところ、悪い目が続けて出てしまった。自分よりついてない人生を送っている人々、腰が痛くて生きているのが面倒くさく思われた日々などを思い出し、嘆くまい嘆くまいと努力している。また、霊験あらたかな氏神様にお参りに行くことにしょう。