月見れば、・・・

 小さな家であるが、屋上を作ったことは正解であった。暑い時期の夜、屋上でボーとしているのは至福の時間である。
 中秋の名月を見ると、大江千里の「月見れば 千々に物こそ 悲しけれ わが身一つの 秋にはあらねど」を思い出してしまう。10年以上外国で暮らしてきた娘が、イギリスの田舎で秋の名月を見ながら、この詩を思い出していたことを覚えている。日本では中学までしか教育を受けていない帰国子女の娘が覚えているくらいだから、ほとんどの日本人が風雪に耐えたこのような名歌を百近く暗記しているということで、このようなことこそ誇るべき文化である。

 時間がドンドン過ぎてしまう。ブルグが書けないのは、病気であったわけでない。何をしていたか聞かれると困るほど、日常的生活に時間が取られてしまう。「考え込むより、アウトプットし続けることだよ」とあるベストセラー書きが言っていたが、ブルグといえどもゴミや嘘は書けない。「4時に起きれば、すべてが解決」とか未知の部分の方がはるかに多い脳科学について解ったようなことを言うのは皆嘘っぱちだ。中秋の名月も見たいし、本や映画の時間も、寝る時間も欲しい。サンキューと言い続けるような人生でないと結果はでないという本も読んだ。心静かになれないまま、死んでしまうのであろうか。