最高の人生の見つけ方 (THE BUCKET LIST)

 腰痛がひどい時など、生きるのが面倒だと感じる歳になった。人生、残り時間を意識して生きる歳でもある。本作の原題(THE BUCKET LIST)は、死ぬまでにやっておきたいことのリストということらしいが、私はそのようなリストを準備しているわけでもない。リクエストを作ると切りが無いだろうし、一つ一つ消化していくことも面倒で、日々是好日であれば十分だし、子供や孫の活躍を遠くから見ることが出来れば、それに越したことはない。そして、無理することなく来ることが出来る少数の家族や友人に、「それじゃ、またね」と静かに別れを告げたい。生まれる時も一人、死ぬ時も一人のはずだから。
 そんなことを考える歳だから、本作を見逃すわけにはいかないし、なかなかの評判でもあった。本作の主人公二人は、金儲けとクイズのゴミ箱知識を飽きもせず追いかけて来たある日、突然に余命6ヶ月を宣言され、二人でTHE BUCKET LISTを騒がしく消化していくうちに、死に直面することを避けるように灰になっていった。大変好ましい死に方で、私も何かに没頭している状況で、死んで行きたい。そのような状況を想定した「死に花」という邦画の失敗作があるが、「死に花」に比べれば、本作の方がはるかに出来は良い。死というものをカラッと明るく笑い飛ばすことに、ある程度は成功しているだろう。しかし、素晴らしいと言うほどの傑作とも思われない。昨日書いた「Dear Pyongyang ディア・ピョンヤン」が表現したように、深刻な問題を背景に意識しつつ、愛情深く明るく生きつつ死んでいくという深みを描くことが出来でいるようには思われない。ハリウッドの子供だましのような軽薄さが鼻に着いてしまうような感じも否定できない。名優二人の好演がシナリオを救ったということではないだろうか。
{前評判が高かった反動で、映画愛好家としては3点、名優二人の好演がなければ、「死に花」のような愚作に終わりかねないリスクがあり、投資家としては2点の評価。}