あるべき投資資産配分

 資産運用の成果を分ける最大の要因は資産配分、つまり運用資産のどの程度の比率をどの資産に割り当てることにあると考えている。最近1年間で言えば、株式投資の比率が高かった投資家は、それが日本株であっても先進国や新興諸国の株式であっても、グローバルな株価下落からほとんど損失を被っているはずである。ここ5年間で見れば、BRICS新興国株式、ドル以外の外貨投資、日本の株及びREIT,金あるいは商品ファンド等々の投資から始め、アメリカのサブプライム・ローン問題が議論されるに従い、円建てMMFにシフト出来ていれば、万々歳であったろう。グローバルな資産配分は究極の投資判断で、言うは易く、結果を出し続けることは極めて難しい。私の現状で言えば、割安に放置されていると考えている日本株、安値と判断して買い戻したロシアやインドの投信がバカにならない損失を蒙っており、こんなことなら、全額を円建てMMFにして、夏休みを楽しむべきであったとくやんでいる。
しかし、やるもリスクやらぬもリスクである。これからの資産配分を考えるべく、ツンドクになっていた「冒険投資家ジム・ロジャーズ 世界大発見」を読むことにした。ジム・ロジャーズはJ.ソロスと組んだクオンタム・ファンドで驚異的な運用成績を残し、37歳で引退した伝説のファンド・マネジャーで、本書は、自動車で3年をかけた二度目の世界漫遊の旅行記で、足で集めた投資情報を期待して読み始めた。ロジャーズが商品投資と中国への投資に強気であることは、他の本や情報からも知られているので、その他の地域の情報を得られればと考えた。恋女房が同行したこともあってか、旅行記としての記述が多く、投資情報は限られたものでしかなかった。
それでも鋭い指摘が多く、参考にはなった。「成功した投資家のやり方というのは、ふだんは何もしないことだ―むこうの角にお金が転がっているのが見え、そこへ行って拾えばいいだけだということがない限り。投資とはそういうものだ。・・・絶好の機会というのは、そうそうあるものではない。しかし、あまり間違いを犯さなければ、そうたくさん必要であるものでもない。」(日経ビジネス人文庫、470頁)中国の勤勉さやビジネス精神に高い評価を与えるが、ロシアやインドの官僚主義やビジネス・センスの欠如には大変厳しい評価を与えている。アフリカや中央アジア諸国の混乱状況にも厳しいコメントが多い。ブラジルやベトナムには行ってないようだが、中国を除くと、大きな投資チャンスがないような印象を持たされる。「お金持ちになる最善の方法の一つは、ひどい戦争が終わった国へ行くことだ。」とあるので、状況は変化を続けることにはなる。
その中で、当面10年くらいの日本の株式市場にはプラス評価を与えている。「日本は哀れにも途方にくれた巨人であり、深刻な問題に直面している。日本の問題は人口構成に端を発する。・・・財政赤字を膨らませてきたことが、問題をいっそう深刻にしている。・・・効率的な起業能力で知られた国は、硬直性と過度の規制で窒息しかけている。」(139頁)日本の長期的問題が深刻であるにも拘らず「今日本を買う主な理由は、世界中が一様に、日本はにっちもさっちもいかなくなっていると信じているからだ。日本はとても割安だ。・・・市場は、10年単位ではなく、年単位の中期では典型的な底入れの兆しを見せている。ちょうど今、日本は失望で溢れている。・・・誰も彼も不安で取り乱しているのだ。」(144頁)この本の出版は2003年であるが、日経平均が12千円台にまで落ち込み、再び配当利回り長期金利との逆転が言われ始めている日本現状と他の投資機会とを比較すると、ジム・ロジャーズの言葉には説得力があるように思われる。