「めがね」


クロサギ」「少林少女」等々の観たことを後悔するような映画が続いたので、宅配DVDのサービスを中断することにした。観るべき映画をほとんど観たとは思っていないが、2年間にわたり優先して映画を観る生活をしてきたが、限界効用が逓減したと言うか飽きたと言うか、時間の使い方を変えてみることにした。
 そんな時、荻上直子監督の「めがね」をケーブル・テレビで観ることになった。前作「かもめ食堂」は、ヘルシンキで日本飯屋をやる状況設定が納得できず、若手女性監督が自信満々に手前勝手な学園祭映画を作ったとしか思われなかった。しかし、「癒し系」と言われる作風に多少の未練を感じていたし、ひょっとしたら「めがね」はうまく作っているかもしれないと考えたわけである。「クロサギ」「少林少女」といった超駄作は、観る前の予想がすべて悪い方向に当ってしまうわけだが、「めがね」は期待がすべてよい方向に当ってくれた。「黄昏れる」という心情が良い意味で理解でき始めた年齢になったから、余計にこの映画を楽しむことが出来たのだろう。「荻上監督の作風は、ある時代の少女マンガの影響を受けたもので、それほど深いものではない」と言う人もいるわけで、その程度の小娘の作品に感じ入っているのだとすれば残念な気がしないでもない。確かに、「めがね」に意味があるのであれば、論理的には主人公の女性が帰る自動車の窓から「めがね」を落としてしまい、それを拾わずに帰ってしまうところをエンディングにすべきであったように思われる。いずれにしろ、「めがね」は強い個性を持った若手監督が、前作を遥かにしのぐ進歩を見せた作品であったと思っている。