日本アカデミー賞

 日本映画制作者連盟の集計によれば、昨年の映画興行収入は2207億円で、2010年比7%増、入場人員で見ても174百万人で対前年3%と一見したところ改善している。しかし、興行成績上位の映画のリストを見て驚かされることは、アニメと漫画が圧倒していることである。
 邦画(1182億円)でみると、「借りぐらしのアリエティ」(1位、92.5億円)、「ワンピース」(4位、48.0億円)、「ポケットモンスター」(5位、41.6億円)。洋画で見ると、「アバター」(1位、156.0億円)、「トイ・ストーリー3」(3位、108.0億円)、「カールじいさんの空飛ぶ家」(4位、50.0億円)。このほか、「ドラえもん」「仮面ライダー」なども上位にあり、「のだめカンタービレ」のような漫画の実写化も上位にある。確かに、孫と漫画映画を見に行くと、子供+付き添いの大人で混んでいることが多い。
 邦画に絞ると、2位と3位は「海猿」「踊る大捜査線」とテレビ系のエンタテーメントで、シリアスな作品は、「告白」(7位、38.5億円)、「ハナミズキ」(12位)、「大奥」(14位)、「おとうと」(15位)、「悪人」(16位)、「十三人の刺客」(19位、16.0億円)まで跳んでしまう。このリストには、日本アカデミー賞作品賞5本の内の4本が含まれており、残り1本は「孤高のメス」となる。優秀作品賞、優秀監督賞、優秀脚本賞のそれぞれ5本が、「告白」、「おとうと」、「悪人」、「十三人の刺客」、「孤高のメス」とまったく同じ作品であり、結局、この3賞はすべて「告白」、俳優賞4本はすべて「悪人」が受賞する結果になった。いずれの作品も悪くはないが、やはり「告白」が断然良かったので、この結果には得心がいく。
 しかしながら、408本も公開された日本映画で、この程度の作品がベスト5であるのはやはり寂しい。断トツのベストだと思う「告白」はあまりに冷酷な話なので、綺麗に仕上がってはいても米国アカデミー賞外国語部門の予選を勝ち抜くことは出来なかった。邦画としては大作の「十三人の刺客」の収支は多分赤字。秀作である「告白」、「悪人」、「孤高のメス」はベストセラー原作の映画化、「十三人の刺客」はリメイク、市川昆作品や寅さんを彷彿とさせる「おとうと」もオリジナリティは高くない。要すれば、映像作家の手になる映画でしか観ることの出来ない作品が作られていないということである。もちろん、アミメや3Dも映画であると考えれば、新しい映画の時代であると考えられなくも無い。しかし、オリジナルな映像作家の秀作が見当たらない、あるいは観て頂けないという実写映画ドラマの危機を示すような日本アカデミー賞選考結果であり、映画興行成績であったように思われる。