レーマン放置、AIG救済は妥当である

 サブプライム問題がこれほど大きくなるとは予想してなかった。メリル・リンチ証券をほとんど倒産にまで追い込んだ経営者が、数十億円の退職金を受け取るわけだから、アメリカのエリート経営者たちが、私利私欲のために会社をとことん利用しようとするのは当然だったのだろう。もともと二流投資銀行であったベア・スターンズや名門ではあるが凋落著しかったレーマンが、比較的得意であった証券化業務にのめり込んで破綻したのは兎も角、国際的に大きな存在感を持ち、ハイリスク・ハイリターン業務で時代を画してきたAIGまで巻き込まれたのは驚きであった。
 州法に縛られて国際化に遅れた米国保険会社の中で、アジアを中心に早くから国際展開をしてきたAIGは例外的存在で、わが国でもAIU保険(損保)、アリコジャッパン(生保)などを展開しており、AIGが倒産した場合の混乱は、投資銀行一つ二つの倒産とはマグニチュードがまったく違う。リテイル展開しているメリル・リンチをバンカメが救済合併し、ポールソン財務長官の出身母体であるゴールドマンの業務拡大が期待できるホールセール投資銀行レーマンを見せしめとして倒産させ、世界が大混乱に追込まれてしまうAIGを救済したことは、極めて妥当な判断であった。カウ・ボーイたちがAIGまで放置するのではないかとヒヤヒヤしていた。
 地方銀行などの倒産はまだまだ続くはずであるが、ファニメーやAIGといったマグニチュードの問題ではないから、これでしばらく時間をかけて解決することが出来るようになろう。日本のバブル崩壊との類似が指摘されるが、GMなど基幹産業も問題含みであるから、米国の現状の方が深刻なはずであることは強く意識されるべきであろう。パックス・アメリカーナの終焉が加速されたわけで、ドルの長期下落が始まれば、アメリカの時代の終わりがはっきりしてくる。アメリカのためにも、日本は従順な子分であることをやめるべき時期に来ている。