金融

JDC信託の蹉跌

ジャパン・デジタル・コンテンツ(JDC)信託に業務停止命令が出された。JDCは、映画ファンドなどを信託スキームを利用して、証券化する目的で設立された。通産省のコンテンツ産業育成事業の勉強会の成果から生み出され、トヨタ自動車を筆頭株主に2000…

「ハゲタカ」

評判になっている「ハゲタカ」を観に行きました。 NHKテレビ・ドラマも面白かったが、この映画は予想以上に面白かった。実際の金融経済が激動した時期であったことから、何度もシナリオを書き換えたということであるが、たくさんのトピックスを2時間の枠…

金融危機の本質

①アメリカの高名な金融工学の学者が、飛行機ではなく汽車で学会に来ました。 「またなんで?」「統計データを整理していて、最近はちょくちょく、爆弾をかかえたテロリストが機内にいるんだ、ということに気付いたんです」 学者仲間はなるほどと思った。ただ…

「金融恐慌本」読み比べ(2)

竹森俊平「資本主義は嫌いですか」の面白い点は、バブルは経済成長に必要であると主張するティロールのような経済学者の紹介であった。彼らの主張は、動学的効率性の条件(その経済における投資収益率が成長率を上回る)が満たされない場合には、バブルが経…

 「金融恐慌本」読み比べ(1)

昨年の暮れから、最近目に付きだした「金融恐慌本」の大雑把な読み比べを始めている。このブログで既に書いているが、サブプライム・ローン問題のポイントは何も調べなくても長年の経験で分かる。しかし、私はサブプライム・ローン問題を過小評価してしまっ…

金融技術革命

金融ビジネスの論客で知られるY先生からいただいた年賀状に、「金融工学のパイオニアからご覧になると、今の金融動乱はどう眼に映るのですか?」との添え書きが付けられていた。確かに、ここ3年ほどはあまり金融技術に関して、雑誌論文のような形で発言し…

農林中央金庫

農林中金が、有価証券含み損1.5兆円の存在を背景に、1兆円の増資を発表した。農中は、農協系統金融機関の余剰資金約60兆円を運用しているが、うち36兆円を海外の投資運用に振り向けており、ファニメーなど米国住宅金融公社債券に3.5兆円、CDO(債務担…

強欲資本主義

神谷秀樹「強欲資本主義 ウォール街の自爆」(文春新書)を一気に読み終わった。私の現状認識にこれほど近い内容の本も珍しい。このブログの「サブプライム・ローン問題」に関する記述を読み返していただくとお解かりいただける様に、私もウォール・ストリー…

アメリカのカントリー・リスク

カントリー・リスクとは、海外投融資や貿易取引で、相手国の社会不安や政情不安、想定外の反応などのために資金の回収が不可能となる危険を指し、通常は発展途上国や独裁国家の問題であると考えられている。自由主義を国是とするアメリカは、カントリー・リ…

サブプライム・ローン問題(その4)

サブプライム・ローン業界の現場に詳しい知人から、まとまった話を聞く機会があった。予想以上にひどいことが実践されていたことを知り、最近のなりふり構わぬアメリカ政府の対応状況を重ね合わせて、問題の深刻さを改めて認識させられた。 米国サブプライム…

レーマン放置、AIG救済は妥当である

サブプライム問題がこれほど大きくなるとは予想してなかった。メリル・リンチ証券をほとんど倒産にまで追い込んだ経営者が、数十億円の退職金を受け取るわけだから、アメリカのエリート経営者たちが、私利私欲のために会社をとことん利用しようとするのは当…

あるべき投資資産配分

資産運用の成果を分ける最大の要因は資産配分、つまり運用資産のどの程度の比率をどの資産に割り当てることにあると考えている。最近1年間で言えば、株式投資の比率が高かった投資家は、それが日本株であっても先進国や新興諸国の株式であっても、グローバ…

風説の流布

オリンピックでの超人たちの感動的な活躍を観ていると、こんな薄汚い話を書くことが惨めに感じられるが、まあ人生いろいろである。 「風説の流布」とは、金融商品の価格を変動させる目的で、虚偽の情報を流し、相場操縦をはかることで、金融商品取引法上の禁…

 フレディマックとファニーメイ

今日の日経新聞の三分の一が米国住宅抵当公社2社の公的支援問題に当てられている。新聞に書かれてないことで、それなりに意味を持つと思うことを列挙すると次のようになる。 (1)この2社以外に、米国住宅ローン証券化の公的保証機関として、GNMA(Governm…

 株主優待制度への疑問

株主総会のシーズンが終わり、配当金の支払いとともに株主優待制度を改めて実感させられているが、この制度には大きな疑問と矛盾を感じる。理論に従い小口分散投資を専らとしているから、いろいろな株主優待制度があることに気付かされる。 先ず、株主優待制…

ある頭取(その2)

ブックステーバーの「市場リスク 暴落は必然か」を読み終えた。読む前と後で、リスク管理や金融技術に関する大局観には変化がない。同じ時代に同じようなことを考えて来た人間の若干違った経験を聞くことには、参考になる点や確信を強めてくれる点があったが…

ある頭取(その1)

本ブログを始めていくつかの反応があった。昨日「ブログを読んだ。久しぶりに話しに来ないか」というお誘いを受けて、ある銀行の頭取とお話をした。 伺うと、机の上に2冊の本が置かれていた。R.ブックステーバーの「市場リスク 暴落は必然か」とB.マン…

金融士

金融庁の発案で、「金融士(仮称)」資格の創設構想が打ち出されている。これも遅きに失した政策であるが、無いよりはマシな制度になることを期待したい。 40年前、公務員ではなく銀行に就職することにした時点で、プロ金融マンとして公認会計士の能力が必…

サブプライム・ローン問題(その3)

ここ60年間で、金融理論特に金融技術に関する理論は、高度な発展を遂げたと言われている。確かに、ノーベル経済学賞の受賞者リストを見ても、金融技術に関する功績が大きい受賞者の数は10人を越えている。私は金融技術開発に力を入れていた時期に、これ…

サブプライム・ローン問題(その2)

サブプライム・ローン問題は、現在の金融システムと金融理論が陥っている課題を象徴する現象の一つなので、5月4日に引き続き(その2)を纏めたい。 最近、証券化商品などで実際の取引が少ないために時価を算出しにくい高リスク資産を「レベル3」の資産と呼…

 貯蓄から投資へ(その3)

1500兆円の金融資産は幻想である しばしば、「日本には約1500兆円の金融資産がある」と言われる。この数字は、国の貸借対照表とも言うべき「金融資産負債残高表」の「家計」部門の資産額を指している。若干古いが手元にある「金融経済統計月報」(日本銀行)…

 貯蓄から投資へ(その2)

10年前の拙著に次のように書いた。「現在の筆者には、バブルの形成とその崩壊を体系的に整理する時間がないが、30年間銀行で働いている現場感覚でいえば、その最大の原因は、わが国経済が資金不足時代から資金余剰時代に変化したことへの認識と対応が不…

 貯蓄から投資へ(その1)

私は資産運用理論研究のプロであり、大学でそのような講義も教えている。いっしょにこの分野を研究したたくさんの後輩たちが、資産運用会社や投資ファンドの一線で活躍したり、大学で教えている。 しかし、それでも資産運用で大成功する自信は持てない。私が…

大いなる陰謀

連休の最後は、R.レッドフォードに敬意を表し、「大いなる陰謀」のレイトショーを観に行くことにした。映画の投資採算性 映画やDVDを観る前に、Yahoo映画サイトのユーザーレビューを見ることにしているが、本作の平均評価は3点弱と低い。但し、こ…

サブプライム・ローン問題(その1)

最近、サブプライム・ローン問題が喧しく議論されている。しかし、これらの業務を長年にわたり担当してきた眼で見れば、その本質の理解はそれほど難しいことではない。 本質1:債務返済は、借入人ではなく担保不動産の値上がりが行うことになるという「新し…