2008-01-01から1年間の記事一覧

 フレディマックとファニーメイ

今日の日経新聞の三分の一が米国住宅抵当公社2社の公的支援問題に当てられている。新聞に書かれてないことで、それなりに意味を持つと思うことを列挙すると次のようになる。 (1)この2社以外に、米国住宅ローン証券化の公的保証機関として、GNMA(Governm…

 株主優待制度への疑問

株主総会のシーズンが終わり、配当金の支払いとともに株主優待制度を改めて実感させられているが、この制度には大きな疑問と矛盾を感じる。理論に従い小口分散投資を専らとしているから、いろいろな株主優待制度があることに気付かされる。 先ず、株主優待制…

アンジェイ・ワイダ 祖国ポーランドを撮り続けた男

NHKは軍資金も人材も豊富である。昔、金融関係のドキュメンタリー制作をお手伝いして、他のテレビ局との大きな差を感じさせられた。したがって、NHKのドキュメンタリーには、世界的水準の作品が散見されても不思議ではない。6月15日に放映されたE…

 西の魔女が死んだ

私の家内はイギリス人で、子供3人、孫5人がいる。この映画の予告編を観たときに、これは観なければいけない映画だという義務感におそわれ、直ぐに梨木香歩の原作を読んだ。疲れていたこともあったが、書出しの部分でやたらと無駄に言葉が使われているとの…

ある頭取(その2)

ブックステーバーの「市場リスク 暴落は必然か」を読み終えた。読む前と後で、リスク管理や金融技術に関する大局観には変化がない。同じ時代に同じようなことを考えて来た人間の若干違った経験を聞くことには、参考になる点や確信を強めてくれる点があったが…

ある頭取(その1)

本ブログを始めていくつかの反応があった。昨日「ブログを読んだ。久しぶりに話しに来ないか」というお誘いを受けて、ある銀行の頭取とお話をした。 伺うと、机の上に2冊の本が置かれていた。R.ブックステーバーの「市場リスク 暴落は必然か」とB.マン…

仮想世界と現実世界(その2)

16日の本ブログに「仮想世界と現実世界」を書いて、翌17日に「連続幼女誘拐殺人犯 宮崎死刑囚の刑執行」となり、その偶然に驚いた。宮崎死刑囚は、幼い4人を殺害した犯人であるが、自宅に大量のビデオテープを所有していたことや性格の異常性が話題にな…

仮想世界と現実世界(その1)

ビジネスマンであった頃は、毎日、関係者と議論や会議をして現実の問題を解決・進展させようとしていた。大学教授に転ずると、本や資料を読み、考えて纏めるという一人の作業が多くなり、現実に存在する問題以上に理論や歴史的背景を考えるという言わば仮想…

金融士

金融庁の発案で、「金融士(仮称)」資格の創設構想が打ち出されている。これも遅きに失した政策であるが、無いよりはマシな制度になることを期待したい。 40年前、公務員ではなく銀行に就職することにした時点で、プロ金融マンとして公認会計士の能力が必…

サブプライム・ローン問題(その3)

ここ60年間で、金融理論特に金融技術に関する理論は、高度な発展を遂げたと言われている。確かに、ノーベル経済学賞の受賞者リストを見ても、金融技術に関する功績が大きい受賞者の数は10人を越えている。私は金融技術開発に力を入れていた時期に、これ…

サブプライム・ローン問題(その2)

サブプライム・ローン問題は、現在の金融システムと金融理論が陥っている課題を象徴する現象の一つなので、5月4日に引き続き(その2)を纏めたい。 最近、証券化商品などで実際の取引が少ないために時価を算出しにくい高リスク資産を「レベル3」の資産と呼…

最高の人生の見つけ方 (THE BUCKET LIST)

腰痛がひどい時など、生きるのが面倒だと感じる歳になった。人生、残り時間を意識して生きる歳でもある。本作の原題(THE BUCKET LIST)は、死ぬまでにやっておきたいことのリストということらしいが、私はそのようなリストを準備しているわけでもない。リク…

素晴らしいドキュメンタリー・ドラマ

ドキュメンタリー作品というと、NHKのように、出来るだけ感情を排し、客観的な印象を与える作品が本来の姿であるような気がしていた私にとっては、感情を前面に出したドキュメンタリー・ドラマとも呼ぶべき作品を2本続けて鑑賞した。Dear Pyongyang ディア…

 平泉

平泉の世界文化遺産登録が延期されたというニュースが流れた。 仙台に住んでいる時に、見逃すべきでないものの一つが平泉であると考え、車を使い一泊二日で平泉を訪れた。京都・奈良とはいかないまでも、少なくとも鎌倉の半分くらいは見るものがあるとの前提…

 貯蓄から投資へ(その3)

1500兆円の金融資産は幻想である しばしば、「日本には約1500兆円の金融資産がある」と言われる。この数字は、国の貸借対照表とも言うべき「金融資産負債残高表」の「家計」部門の資産額を指している。若干古いが手元にある「金融経済統計月報」(日本銀行)…

フィクサー

本年度アカデミー作品賞など多数の部門で候補作であり、社会派スリラーという私の好きな題材であるから、遅ればせながら「フィクサー」を観に行った。大変面白かった。 アカデミー作品賞を受賞した「ノーカントリー」、同候補作「ゼア・ウィル・ビー・ブラッ…

 貯蓄から投資へ(その2)

10年前の拙著に次のように書いた。「現在の筆者には、バブルの形成とその崩壊を体系的に整理する時間がないが、30年間銀行で働いている現場感覚でいえば、その最大の原因は、わが国経済が資金不足時代から資金余剰時代に変化したことへの認識と対応が不…

 貯蓄から投資へ(その1)

私は資産運用理論研究のプロであり、大学でそのような講義も教えている。いっしょにこの分野を研究したたくさんの後輩たちが、資産運用会社や投資ファンドの一線で活躍したり、大学で教えている。 しかし、それでも資産運用で大成功する自信は持てない。私が…

大学教育をどう考えるのか

前回に引き続き、大学教育を考えてみたい。 我国の重要な中期的課題の一つが教育問題であり、大学及び大学院教育であると考え始めてから久しい。例えば、10年ほど前に出版した本の中にも「アメリカの金融教育」の章を設け、ビジネス教育における日米間の圧…

専門職大学院

専門職大学院と言う言葉はやっとわが国でも定着したかに思われるが、専門職大学院で十分にその機能を発揮出来ている成功例は未だ極めて少ない。 1971年に社費留学生としてアメリカのビジネス・スクールに留学させてもらった時の驚きは未だ鮮明に覚えてい…

 ゼア・ウィル・ビー・ブラッド

アカデミー賞候補になった作品で好きなジャンルの映画であり、遅ればせながら観に行った。期待を下回ることはなかったが、上回ることもなかった。 シンクレアの原作は知らないが、原作に引きずられて、映画としての焦点が絞り込めず、長くなり過ぎたように思…

「わが青春に悔いなし」

昨日、大学から帰ってテレビをつけると、黒澤明監督の「わが青春に悔いなし」が始まるところであった。あまり気にしたことがない映画であったが、奇遇であり観ることにした。 出だしから引き込まれてしまった。正義感が強く実行力のある「野毛」と、母親の言…

腰痛と社会

昨年の後半から、腰痛がひどい時がある。痛む時には、まさに体の要であり、生きて行くのが面倒になる。西洋医学は痛み止めの薬以外はほとんど無力と言ってもよいような状況で、腰痛経験者から教えてもらった種々の方法を試み、漢方薬で小康状態に入っている…

大いなる陰謀

連休の最後は、R.レッドフォードに敬意を表し、「大いなる陰謀」のレイトショーを観に行くことにした。映画の投資採算性 映画やDVDを観る前に、Yahoo映画サイトのユーザーレビューを見ることにしているが、本作の平均評価は3点弱と低い。但し、こ…

オタク文化と経済問題

岡田氏のオタク論 岡田斗司夫「オタクはすでに死んでいる」(新潮新書、2008年)を読んだ。コンテンツ産業、なかんずく漫画・アニメ関連に対しての経済的期待感が強く、経済産業省なども数々のプロモーションを行ってきた。漫画・アニメ関連の根底には「オタ…

孫娘そして幸福とは

始めて会った孫娘がロンドンに帰ってから1週間となり、やっと日常的な精神バランスが戻ってきた。1歳8ヶ月の可愛い盛りの孫娘が帰ると、恋人と別れたような気分になり、いないことが大変に寂しかった。恋人の場合、直ちに単なる他人の関係に変化しうるから…

サブプライム・ローン問題(その1)

最近、サブプライム・ローン問題が喧しく議論されている。しかし、これらの業務を長年にわたり担当してきた眼で見れば、その本質の理解はそれほど難しいことではない。 本質1:債務返済は、借入人ではなく担保不動産の値上がりが行うことになるという「新し…

GWの映画館

昨年4月、水曜日の午後6時開演であったが、駅から5分の映画館で、「どろろ」をたった一人の観客として観ることになった。柴咲コウのファンではあるが、本作は私の好みの分野ではなく、大宣伝に乗せられることもシャクだったので、見ないことにしていたが…

はじめまして

大学教授に転職してから、個人でホーム・ページやブログを作ることを薦めてくれる人もいたが、自己顕示の臭いが強すぎるので、見合わせてきた。 このところ、人生の残り時間があまり多くはなくなってきたと感じ始める等々、多少の心境変化があり、ブログを始…